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JR線「田町」駅芝浦口から徒歩5分に位置するグランパークは、オフィス、ショッピングゾーン、住居が融合した「トリプル・コンプレックス」の複合ビルとして、1996年10月に竣工しました。
グランパークの計画にあたって、NTT都市開発は一つの試みを行いました。それが地域冷暖房の導入です。地域冷暖房は、個別冷暖房よりも省エネルギー、環境保全面で優れており、安全に冷暖房と給湯を行えるシステムであり、近年、さまざまな地域で採用されています。
グランパークが建つエリアの地域冷暖房の導入と運営・管理を行っているのは、NTT都市開発と東京ガスとの共同出資である「(株)ディ・エイチ・シー・東京」(以下 DHC東京)。現在、そのDHC東京がグランパークにおける日々のエネルギー効率の向上に取り組んでいます。
そこで今回は、導入から10年を経たグランパークの地域冷暖房の現状についてご紹介いたします。ナビゲーターはNTT都市開発(株)ビル事業本部の松岡昌一が務めます。

ビル事業本部
松岡 昌一氏

(株)ディ・エイチ・シー・東京
近馬 均氏
地域冷暖房についての具体的取り組みについて、DHC東京技術部長の近馬均氏にお話を伺いしました。
地域冷暖房は、一定の地域内にある建物に、地域冷暖房プラント(熱供給設備)から冷水・温水・蒸気などを供給して、冷暖房や給湯を行うシステムを言います。
地域冷暖房はもともと、熱源設備を一体化することで、大気汚染や公害防止の対策を取りやすいという点が注目されていました。というのも、昭和40年代から50年代にかけては公害が社会的な問題になっていたからです。しかし最近は、ゴミ焼却時に発生する排熱や、河川水・海水・下水などの温度差エネルギーなどの未利用エネルギーも活用できるということで、省エネや環境保全などの面からも、大きな注目を集めています。
省エネということでは、ガスコージェネレーションなどの高効率システムとの組み合わせにより、さらなる効果アップが期待できるのもメリットです。地域冷暖房システムの運転を工夫することで、総合効率を向上させることもできます。加えて、石油やガスなどの一次エネルギー削減によって、CO2排出量を削減でき、地球温暖化やヒートアイランド対策といった環境保全にも貢献できます。
ほかにも、ビル屋上に設置される冷却塔を集中設置することでビル毎に設置する必要がなくなるので都市景観が向上したり、二次災害も防げるという利点があります。
一方、ビルオーナーや利用者にとっては、365日24時間安定的に熱利用が可能になる、ボイラーなどが不要になるので建物が有効利用できる、熱源設備の管理コストが削減できるといったメリットがあります。

365日24時間休まず地冷プラント、CGSを監視するエネルギーセンター 中央監視室

二重効用蒸気吸収式冷凍機
グランパークでの地域冷暖房の導入は、NTT都市開発としては初めての試みでした。きっかけは、東京都からの要請です。都は一定規模(当時は床面積2万m2)の開発計画については、地域冷暖房を検討するよう要請しており、それを受けて、今後の都市開発はどうあるべきかという観点から検討に入ったのです。その結果、省エネ、環境保全、ビルの運営面などでメリットの多い、地域冷暖房の導入を前提に計画が進められることになりました。
当時、現在グランパークが建つエリアをはじめ、田町駅芝浦口周辺にはさまざまな再開発構想があり、浜松町から品川にかけて広範な地域冷暖房地区の実現可能性も探られていました。そこで、NTT都市開発は東京ガスと共同出資により、DHC東京を設立し、地域冷暖房の導入に向けて準備を進めたのです。その後、開発構想の変遷もあり、結果的には、現在グランパークが建つエリアと隣接する東京工業大学附属科学技術高等学校エリアが、地域冷暖房地区として指定されました。
DHC東京による熱供給は、グランパークが竣工した1996(平成8)年10月から始まりました。グランパークは、タワー棟、プラザ棟、ハイツ棟で構成されていますが、ハイツ棟は2階部分までの供給となっています。

ガスコージェネレーションシステム
導入当初は、蒸気ボイラー2台、吸収式冷凍機3台で構成されていました。都市ガスを蒸気ボイラーで燃焼して蒸気を発生させ、その蒸気を暖房や給湯用に供給する一方、蒸気によって吸収式冷凍機を動かして7℃の冷水を作り、それを冷房で利用するのです。なお、熱交換した冷却水は回収され、再び7℃の冷水にしてビルを循環するということを繰り返します。
このシステムでも、冷・温熱販売量と電力販売量を、ガス使用量と電力使用量で除したプラント総合効率で66.9%という高い数値を出していました。ただ、最近の地球環境問題への関心の高まりの中で、さらなる省エネ性と環境負荷の低減を図ることが、課題となってきました。特に、DHC東京は省エネ法*でエネルギー管理指定工場となっているため、毎年一定の目標を定め、省エネやCO2削減に取り組むことが求められています。
*省エネ法とは?
正式には「エネルギーの使用の合理化に関する法律」と言い1979年9月に制定された。2006年4月1日には、地球温暖化防止に関する京都議定書の発効や世界的なエネルギー需給のひっ迫等を踏まえて、産業・民生・運輸各分野におけるエネルギーの使用の合理化を一層進めるため改正された。工場、建築物及び機械器具についてのエネルギーの使用の合理化に関する措置やその他エネルギーの使用の合理化を総合的に進めるための必要な措置が定められており、指定された工場はエネルギー管理者の選任や定期の報告などが求められる。
そこで、2003(平成15)年9月には、ガスコージェネレーションシステム(CGS)を導入。電気供給サービスを開始することで、排熱蒸気をほぼ 100%使えるようになり、熱供給の安定性向上を図るとともに、それまでのシステムに比べて省エネ率13.5%を達成し、温室効果ガス排出原単位 24.1%を削減することができました。

往復の冷水温度を示している
(左/往路 右/復路)
CGSは、ガスエンジンやガスタービンなどを利用して発電し、排ガスや冷却水の排熱を回収して空調や給湯に利用するというものです。送電によるロスが少ないため、商用電力(電力会社から購入する電気)と比べてエネルギー利用効率が非常に高く、CO2削減にも大きな効果を発揮します。燃焼してもCO2排出量が少ないクリーンな都市ガスを使うというのも特長の一つです。
DHC東京では、650kwの発電能力のあるガスタービン式発電機を2台導入。発電した1300kwの電気はすべてグランパークに供給されています。発電機の排熱は排熱ボイラー(2台)に送られて蒸気として回収され、蒸気ヘッダーで蒸気ボイラーからの蒸気と合わされて、暖房・給湯用として供給されます。

ガスコージェネレーションシステムフロー図
ただし、こうした熱供給システムの能力を十二分に発揮させるためには、普段のオペレーションが大変重要になります。制御は自動化できますが、より効率的な運転・運用を行うためには、人の智恵が不可欠です。毎日、担当者が稼働状況を見ながら非常に細やかな調整を行うのはもちろん、過去のデータを読み取り、具体的な改善プランを考えては試行するという繰り返しの中で、総合効率を高める努力を繰り返しています。
例えば、冷水は7℃に設定され、ビル内を冷やした冷水は14℃で戻ってくる設定になっています。しかし、春、秋などの中間期では回収温度は9〜 10℃となるため、当初から9℃で送り出すようにすると、機械の効率も向上します。1週間ほどの実験を行い特に問題がないことを確認しながら、夏以外の夜間、夏の夜間、日中(中間期と土休日)へと適用範囲を拡大。冷凍機効率を向上させてきました。
さらに、2005(平成17)年4月には、冷水と冷却水ポンプのインバータ化を行うといったハード面での改善も合わせて行った結果、平成18年度では81.1%まで総合効率を高めています。これは、ほぼ上限ともいえる数値であり、グランパークの熱電供給システムの効率の高さがわかります。

ボイラーに保温材を貼り付け本体からの放熱を削減

お客様の目に触れないところにも地道な努力することが大事と語る松岡氏
省エネや環境負荷の削減が、社会的なテーマとなっている現在、すべての開発プロジェクトにおいて、エネルギー消費やCO2の削減を念頭に置いた取り組みが不可欠となっています。地域冷暖房による効率化は、国や地方自治体も積極的な姿勢を見せており、各種助成措置や補助金等を用意しています。今後、一定規模以上の開発事業については、地域冷暖房の積極的な導入を検討することが、当たり前となるでしょう。
テナントとして入居されるお客様には、普段、目に触れることの少ない取り組みですが、こうした目に見えないところでの地道な努力こそが、「人」「街」「自然」が調和する街づくりという、NTT都市開発の企業理念を実現するために大切なことだと考えています。グランパークにおいでの時は、CGSが快適な室温を作り出しているんだなと、思っていただければと思います。
