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地球環境問題の深刻化を背景として、不動産開発においてもいかに環境保全につながる街づくりを進めていくかが問われています。「街と自然のハーモニー」を実現するためにどのような姿勢で開発事業に取り組んでいるのか、2009年4月1日に竣工した「大手町一丁目地区第一種市街地再開発事業」の担当者に聞いてみました。

座談会出席者(左から)※印は司会
池田 誠 (開発推進部 開発企画担当課長)
東田中 成佳(開発推進部 開発企画担当主査)
※三宅 大輔(経営企画部 経営戦略担当・環境担当・CSR推進室)
※村田 奈穂美( 経営企画部 環境担当・CSR推進室担当課長)
久保田 一秀(ビル事業本部 PM事業部 担当課長)
鵜木 寛幸(ビル事業本部 PM事業部 日経ビル・JAビル・経団連会館全体共用部管理事務所)
村田:大手町一丁目地区第一種市街地再開発事業(以下、大手町プロジェクト)は、大手町地区連鎖型再開発事業の第一弾として、大手町合同庁舎1・2号館跡地で進められてきました。近年のプロジェクトでは、環境保全の視点が非常に重要になっていますが、このプロジェクトでは、どのような考え方で取り組まれたのでしょうか。
池田:大手町プロジェクトは、都市再生特別地区という都市計画手法を使っています。これは、自治体の地域整備方針への適合、周辺環境への配慮など地域貢献を条件に、用途規制、容積率制限などの緩和を受けられるもので、環境に限らずCSR全般の観点からも、さまざまな貢献を行っています。
東田中:東京都に提出した特区提案の中では5つの大きな柱を立てていて、その一つが「環境への貢献」でした。すでに計画、施工、竣工後のすべての段階において、自然や環境というキーワードは欠かせなくなっていると思いますし、竣工後も考えて、計画段階から配慮していくのは当然だろうと思います。
村田:そうした考え方をもとに、具体的に色々な対策を考えていくということですね。
東田中:そうです。緑化だけでなく、建物の形や材料に関する配慮など色々とあります。それを決めるうえでの要因は、個々のプロジェクトの特徴、例えば立地、行政や地権者・事業者の意向などですが、そういうものを総合的に勘案し、その場所にふさわしい環境への取り組みを検討することになります。
村田:具体的にどういう取り組みをしたのですか。
東田中:隣接している皇居の緑と、将来整備が予定されている日本橋川の緑を立体的につなぐことを強く意識した緑化計画を行いました。低層部屋上には日本の里山をイメージしたスカイガーデン(都心農園)を作り、木々を植え、果樹園、水田、湧き水や水の流れも作りました。さらに、カンファレンスモールの2階・3階にも緑を配置して、スカイガーデン(都心農園)の緑と地上の緑をつなぐとともに、建物北側には壁面緑化を実施しました。
村田:そのように地域に緑が増えていけば、全体的にヒートアイランド対策の一環として、気温が下がるということにもつながっていくでしょうね。
池田:それに、心理的にも緑があると違いますから。
鵜木:昼休みには、オフィスに入っている方がリフレッシュしに訪れています。
三宅:水田ではお米も育てているのですね。
久保田:はい。ただ、高層ビルの谷間のため日射量が約50%しかありません。ビルが完成するまでの2年間にわたり、日照時間が短く風が強いという条件で稲がどのように育つかを、造園会社および大学と共同実験を行い、その結果から稲の品種や土壌の選定などを行いました。
村田:CO2やエネルギー消費量の削減という面では、どういった対策が施されていますか。
東田中:地域冷暖房を採用しています。このビルの地下にサブプラントを作り、ビルだけでなく周囲にも熱供給できるので、個別に設備を作るよりエネルギーの効率利用が可能になり、CO2削減にも貢献できます。
久保田:また、ガラスのカンファレンスモールの共通ロビーには床の中に冷暖房用配管があり、そこに温水や冷水を流して冷暖房を行うことができます。床冷暖をうまく使うことで、ガラスのカンファレンスモールの空調を効率的に運転させることができます。
東田中:ほかにも、中水の利用、自動ブラインドによる日照遮蔽制御、外気を導入した冷房システム、地表熱を抑える保水性舗装など、幅広い技術を導入しています。
池田:とにかく求められる環境性能が非常に高いので、現状で考えられる、技術的に採用可能な設備は、ほぼ導入していると思います。

テナントのオフィスから多くの人がリフレッシュに訪れるスカイガーデン

村田:今後、環境に関する規制も厳しくなると思いますが、何か基準を持って対応しているのですか。
東田中:CASBEEという環境性能を評価する基準があります。最高ランクのSを取ろうということで、大手町プロジェクトではチャレンジし、実現しました。大手町一丁目第2地区の再開発でも、事務所用途部分はそれを目指していくつもりです。
池田:CO2削減に関しては、今後、考えられることを総動員しないと、なかなか基準を達成できなくなると思いますね。
東田中:すでに、環境性能を満たさないと開発ができないという状況で、容積率や斜線制限などと同等のルールになってきているという印象です。
村田:将来の変化を見込んで、対応を進めることは難しいですか。
池田:厳しい環境基準に対応して何かをすることは、よりイニシャルコストがかかるということとイコールです。会社としての事業性とのバランスを考えたうえで、対応を考えていきたいと思います。
久保田:竣工後にできるのは空調の温度設定、照明の制御、CO2排出量の多い装置の取り替え、エネルギー制御システムの変更などが考えられますが、いずれも工事費用がかかります。やはり建物を作る段階、つまり設計の段階からこれらを盛り込むことが一番大事だと思いますね。
東田中:やはり、投資がリターンされる仕組み、取り込んだことが評価されて、リーシングにもプラスに働くとか、ビルの評価が高まって企業価値やブランドにもいい影響を与えるといった仕組みが社会全体にできれば、取り組みもさらに変わってくると思います。
三宅:プロジェクトごとに環境対策を行っていると思うのですが、今後、過去の経験値を別のケースに展開するようなことは考えていますか。
東田中:今までは、階高、床荷重、基準階の大きさなどがオフィスビルの評価基準になっていたので、そのデータベースはあります。これからはその一つとして、環境問題への取り組みがあってもいいですね。例えば、緑化面積や緑化率など数字で表せるところは数字でデータベース化して、全社的に共有することを考えたいと思います。設計に関しては、CASBEEを基に既存ビルの性能レベルを評価し、データベースにして把握することが有効だと思います。
久保田:PM事業部では、エネルギー的な側面と運営コストからのアプローチが中心です。ただその中で、例えば電気料金や水道料金を下げるかとか、熱利用効率を上げるかという努力が、環境問題やCO2削減への貢献につながると考えています。建物全体でいかに費用を下げるかを考えていけば、自動的に環境への貢献もできるのではないでしょうか。
鵜木:現場レベルでも、他のビルの管理事務所がどういう取り組みをしているかは、常に情報収集しながら共有化しようとしています。
久保田:それと、開発や設計の段階で考えていたものと、実際に使って5年、10年後の状況はきちんと検証しなければいけません。特に、当社はビルを長く保有して長くお客さまに使っていただこうとしているので、経年変化の状態を把握しながら、長期的なイメージを持つことが大切です。また、これらの実績は次の開発に活かすことができると考えます。
村田:そうした共有化や検証作業を積み重ねることによって、今後、さらにプロジェクトの特性に合った、より最適な環境対策が可能になることを期待しています。
大手町一丁目地区第一種市街地再開発事業

大手町一丁目地区第一種市街地再開発事業 全景
日本経済の中枢的存在である大手町地区では、建物の老朽化が進み、都市機能の更新が大きな課題でした。そこで、世界有数のビジネスセンターとしての機能を止めることなく更新を行うため、連鎖型再開発という手法を採用。第一次開発として、JAビル、経団連会館、日経ビルが2009年4月1日に竣工しました。現在、大手町一丁目第2地区第一種市街地再開発事業が進められています。
