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NTTUD DESIGN 対談シリーズ #02 前編 歴史と文化 ロバート キャンベル  ×  竹村真一 2 イメージ画像

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未来をデザインするために歴史を学ぶ

未来をデザインするために歴史を学ぶ

竹村

同感です。先ほど明治神宮のお話がありましたが、東京の都心には明治神宮や皇居、赤坂離宮、新宿御苑といった広大な緑地が連続しています。ニューヨークとともに1960年代までは世界でただ二つの1000万人都市だったメガシティの中心、開発をすれば一番地価が高くなるはずの場所に、"原始の森"という経済的に価値を生まない"虚(うつ)なる空間"が残されているのです。
しかもその森の多くは人の手が入った森、人工の森です。「人工」という言葉の「工」の字は上の棒が"天"で下が"地"、それをつなぐ人の営みを表す字形だそうです。つまりこれは、自然の風景の中に隠れたコンテクスト(文脈)を浮き立たせることで、元ある自然をもっとよい形で開発していく行為ですね。そうした「工」の営みを、日本人はずっとやってきたように思います。
尾道の書物の例に関しては、実物は資料として後の世代もひも解くことができるようにしっかり保存することが重要であるとともに、これからはそのテキスト内容を"現場というコンテクストに返していく"ことが必要になると思います。近代のヨーロッパの人たちは自分たちにとって物珍しい熱帯の世界から大量かつ多様なアイテムを持ち帰り、博物館に保存し、百科事典としてパッケージしていきました。今度はそれをユビキタス型のメディアデザインで、現場的なコンテクストへと返していく。この双方向の営みをどう両立するかが、我々の世代の課題なのかもしれません。

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キャンベル

"返していく" というのは単に発信することでもなく、物自体をその土地に戻すということでもないですよね。時代の変化とともに、物理的な形跡が破壊されたり、場の記憶が薄れてしまったりしても、わずかな痕跡が土地の風土や人々のコミュニティのどこかに残っていれば、それを何らかの形であぶり出していくことができるはず。
例えば世界遺産として知られる白神山地は"手つかずの森"として認識されていますが、文献を見ていくと、いったんは伐採によって枯渇したブナの森を津軽藩の藩士たちが再生したことがわかります。森そのものだけでなく、それに関わる人の営みの中で生まれた様々な技術や道徳、行動規範を現代にどう活用していくのか。そこが重要だと思っています。

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竹村

「このブナの森は原生林だから守らなければいけない」という発想は西洋近代的な発想ですが、人間は天から与えられた自然を保護するだけでなく、そのポテンシャルを引き出す立場、いわばコーディネーターとして働いてきたということですね。そして、先人たちのそうした営みをその現場において読み取る姿勢にこそ、歴史を学ぶ本質がある。それは言い換えれば、歴史を学ぶことによって未来をデザインするということです。
その意味では京都の祇園祭なども、もったいないと思います。祭りの発祥は災厄や疫病に対する無病息災の祈願とされていますが、実際に当時は中世温暖期の気候変動や災厄も多かった。となると、単に歴史や由緒を知るということにとどまらず、私はこうした祭りにも「変動する地球とどう創造的に共存しうるか」という、現在の人類的な課題につながるようなヒントが込められていると思うのです。
また、インバウンドの急増が注目されますが、京都が国際都市になったのはいまに始まったことではない。京の都はユーラシアの交易のハブになっていたことが、祇園祭の山鉾に飾り付けられたインドやペルシャ起源の緞通(だんつう/模様を織り込んだ敷物)を見てもわかるわけです。祇園祭はそうした記憶を年に一度、可視化してくれる、いわば「動く地球ミュージアム」なのです。表面的な景観への配慮以外にも、やるべきことはたくさんありますね。

  • CREDIT
  • - 主催:NTT都市開発株式会社 デザイン戦略室
  • - 企画&ディレクション:Takram
  • - トーク進行:渡邉康太郎(Takram)、深沢慶太(フリー編集者)
  • - 構成:深沢慶太(フリー編集者)
  • CREDIT
  • - 主催:NTT都市開発株式会社 デザイン戦略室
  • - 企画&ディレクション:Takram
  • - トーク進行:渡邉康太郎(Takram)、深沢慶太(フリー編集者)
  • - 構成:深沢慶太(フリー編集者)

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