誰もが働きやすい職場づくり
~ダイバーシティ推進室の取り組み~
2014年10月、本社総務部に「ダイバーシティ推進室」が誕生しました。
当社として、性別や年齢、人種、国籍、障がいの有無などにかかわらず、多様な人材が活躍できる組織づくりをさらに推進することをめざしています。
2014年度の「なでしこ銘柄」に不動産業として初めて選定されたことも、推進室への追い風になっています。
推進室の発足初年度の取り組みや今後の方向性について、初代室長(CSR推進室長兼務)の高橋がご紹介します。
現場の声を大切に活動
ダイバーシティ推進室が新設された経緯を教えてください。
当社は2014年4月から、新たなコーポレートスローガンとして「誠実に、革新的に」を掲げています。イノベーションが生まれやすい環境を実現できるよう、さまざまな人が働きやすい職場をつくるために、当推進室が設置されました。
ダイバーシティ推進室長に着任する前は、社内でどのような活動をしていたのですか?
社内で子どもを持つ女性社員を集めて、「ママランチ会」を開催しました。私自身、小さな子どもがいまして、子育てをしながら働いているのですが、そんな社内の「ママさん」を集めたランチ会を2012年ごろから自発的に企画してきました。
昼食をとりながら、子育てと仕事を両立させるための工夫など、いろいろと情報交換をする場です。総務部長や社長に同席してもらったこともあります。そういうときには、「こんなことで困っている」「こんな制度があると助かる」といった意見を、社員から経営層へ直接伝えることもできました。推進室の発足後も、ランチ会は不定期ですが、継続して開催しています。
推進室の設立以前から、現場の声を吸い上げる仕組みをつくったのですね。
2015年4月から試験導入している在宅勤務制度も、発端はママランチ会です。ランチ会で、「自宅で仕事ができれば助かる」という意見が出て、ダイバーシティ推進室発足後の11月に全社員アンケートを行ったところ、「在宅勤務制度を利用してみたい」との回答が多数寄せられました。これを受けて、当社の服務制度などを主管している社内の部署に話を持ち掛け、幹部説明の上、実施したという経緯です。
トライアル運用後は、制度を利用した社員、利用できなかった社員にインタビュー等をして、社員が利用しやすいように運用ルールの改善等を行い、本格導入をめざしていきます。
社員の声を大切にしているのですね。ほかに、全社員アンケートをきっかけに生まれた施策はありますか?
シフト勤務の弾力的運用も、アンケート結果を受けてのものです。当社は9時から17時30分を標準的な勤務時間としていますが、子どもの育児や介護が必要な家族の送迎など、個人の事情に合わせて、柔軟に勤務時間を前後に変更できるようにしました。従来は組織単位でシフト勤務を認めていたのですが、新たに個人単位でも可能にしました。
私たちは、こうした服務制度などを主管している社内の部署に対して、新しい仕組みの導入・変更のきっかけづくりやリサーチを行っています。
研修やセミナーで社員の意識を高める
全社員アンケートやランチ会以外にも、社員の声を拾う機会はありますか?
ダイバーシティの推進には、事業部やほかのスタッフ部門との連携が必須ですので、さまざまな部署にいろいろと相談やお願いごとをします。そういうときに、対面で意見を聞いたりします。
ダイバーシティ推進室が発足してすぐ、人権・コンプライアンスに関する全社員研修の中で部分的に時間をもらって講演できることになったのですが、その内容も周りの意見を聞きながら固めていきました。最初は、これから取り組む施策についてだけ話すつもりでしたが、「そもそもダイバーシティって何のことだか分からない」という声が多かったので、そこから話を始めることにしました。
講演後は「ダイバーシティのことが分かって良かった」「取り組みを続けてほしい」という感想も聞くことができました。
研修やセミナーを通じた啓発も、ダイバーシティ推進室の大切な役割ですね。全社員研修のほか、2014年度はどんなセミナーを開催しましたか?
2015年1月には、ワーク・ライフバランス社代表取締役社長の小室淑恵さんを招いて、社内セミナーを開催しました。
たくさん残業をして長時間労働で成果を上げるのではなく、決められた時間内に効率よく仕事をして生産性を高めよう、という趣旨のセミナーです。
それでこそ、体力のある若い男性社員だけでなく、さまざまな人が能力を発揮でき、幅広い意見が事業に反映されて、高い付加価値を生み出せる、というお話をしていただきました。
経営幹部は全員、管理職も一般社員も可能な限り出席して、地方の支店を含めて200人超が聴講しました。当社は単体で400人超の企業ですから、かなり高い参加率になったと思います。セミナーの後には小室さんと社長、各事業部長で座談会を開きました。会社の収入を支える事業部長の意識向上を図り、その様子を社内報に掲載して、「会社が変わろうとしている」ことを社内に伝えています。
NTTグループの他社が開催する研修やセミナーに、当社社員が参加することもあります。
2014年度は、女性キャリア開発研修や育児フォーラムに社員を派遣しました。育児フォーラムには、若い男性社員、女性社員のほか、その上司に当たる層にも参加してもらいました。社員が育児休職制度を利用するには、その上司が制度の意義を理解している必要があるためです。
2015年3月から4月にかけては、障がい者雇用理解促進研修も実施しました。
NTTクラルティ(障害者雇用促進法に基づくNTTグループの特例子会社)に講師を依頼し、障がいの特性や一緒に働く際に配慮すべきポイントを解説いただきました。当社社員に障がいがある場合にスムーズな受け入れが可能になりますし、障がいがあるお客様をお迎えする場合にも、より適切な対応ができるようになります。
2014年度は若年管理職を対象にした研修に組み込んだのですが、2015年度は一般社員が受けられる研修も用意できればと考えています。
トラッド目白を車いすユーザーがチェック
NTTクラルティからは、建物の「ユニバーサルチェック」でも協力を受けているそうですね。
2014年11月に開業した商業施設の「トラッド目白」は、NTTクラルティに勤務している車いすユーザーの社員に、実際に建物の使い勝手をチェックしていただきました。建築物としてバリアフリー基準を順守するのはもちろんですが、障がいのある方々が実際に使ったときにどんな不便があるのか、施設運営側が知ることによって、さらに改善することができます。
これは、より良い施設づくりが目的でしたが、ほかにも意外な効果がありました。NTTクラルティの車いすユーザーの社員と設計担当の社員および運営管理を担当する社員の座談会を設けたのですが、両担当から設計や運営管理を通じて社会に貢献しようという熱い思いが語られて、とても感動的なものになりました。自分の思いを言葉にすることで、考えが明確になったり、初心に帰ったりという効果もあると思いますし、仕事仲間の情熱に触れる機会にもなります。
2015年度も、5月に開業した大型複合ビル「品川シーズンテラス」のユニバーサルチェックを行う予定です。
NTTグループの連携は、ダイバーシティを推進する上でも良い効果を生んでいるのですね。
そうですね。NTTグループとしては、ダイバーシティ・マネジメントを重要な経営戦略のひとつと位置づけていて、グループ間の連携をとりながら、推進に努めています。NTT(持株会社)の主催で年に2度ほど、ダイバーシティ推進室長会議が開かれますし、グループの研修やセミナーでは、オブザーバーとして参加する各社のダイバーシティ担当者が顔を合わせますので、情報交換もできます。
NTTグループには、育児、出産、妊娠、介護などに接したときの対処などを記した「コミュニケーションハンドブック」があり、社員に配布されているので、社員の意識向上も、各社がゼロから始めなくて済みます。
制度設計に関しても、グループの他社の先行事例を参考にできるのはありがたいですね。
不動産業で初めてなでしこ銘柄に
2014年度、NTT都市開発は経済産業省と東京証券取引所が選ぶ「なでしこ銘柄」に選定されました。ダイバーシティ推進室として、どのように受け止めていますか?
とても喜ばしく、光栄に思っています。なでしこ銘柄は、東証一部上場企業の中から、女性活躍推進に優れた企業を選定するものですが、応募制ではなく、各社の公開情報を評価するものです。
当社が選ばれた理由は、NTTグループの女性管理者(課長相当職以上)倍増計画への参画、年休取得率が、管理職を除くと、ほぼ100%であること、女性活躍を推進するためのダイバーシティ推進室の設置などとされています。
不動産業で初めて選定されたことは、私たちにとって自信になりますし、社員のモチベーション向上も期待したいところです。
なでしこ銘柄のロゴマークを名刺に載せるといったことも、社員一人ひとりにダイバーシティ推進へ参画してもらう上で、小さくない効果があるのではないかと考えています。
最後に、今後の取り組みについて、方向性や意気込みを聞かせてください。
まだ、ダイバーシティはその重要性への理解を浸透させている段階で、組織に定着させるのはこれからです。
2015年度は、「働き方の見直し」に向けた社内の機運を醸成することに、特に力を入れたいと考えています。アンケート結果によると、当社には、小学校低学年までの子どもがいる社員、介護をしている、または近々する予定の社員が、相当数いるようです。
こうした背景からも、当社で働く多様な人材が活躍できるような働き方を浸透させることが、企業としての成長にもつながると確信しています。