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「新たな価値を生み出すまちづくり」のために、いまできることは、なんだろう。
私たちNTT都市開発は、この問いに真摯に向き合うべく、
新たな取り組みをスタートさせました。

それは、「デザイン」を軸に社会の変化を先読みし、未来を切り拓く試みです。
私たちが考える「デザインビジョン」から導き出された3つのキーワード
「コミュニティ」「歴史と文化」「ライフ&ワーク」について、
各界で活躍するトップランナーたちの対談を実施。
その模様をここに公開します。

第3弾の対談テーマは「ライフ&ワーク」。ロフトワーク代表、MITメディアラボ所長補佐などクリエイティブ×社会の分野で多彩に活躍する林千晶さんと、国際的建築設計集団OMAのニューヨーク事務所代表として世界中の現場を飛び回る建築家の重松象平さんが、これからの新しい働き方や住まい方、まちづくりの未来について語ります。

林 千晶
(はやし・ちあき)

重松 象平
(しげまつ・しょうへい)

第3弾の対談テーマは「ライフ&ワーク」。ロフトワーク代表、MITメディアラボ所長補佐などクリエイティブ×社会の分野で多彩に活躍する林千晶さんと、国際的建築設計集団OMAのニューヨーク事務所代表として世界中の現場を飛び回る建築家の重松象平さんが、これからの新しい働き方や住まい方、まちづくりの未来について語ります。

林 千晶(はやし・ちあき)

株式会社ロフトワーク代表取締役、MITメディアラボ所長補佐。1971年、アラブ首長国連邦生まれ。花王株式会社、ボストン大学大学院、共同通信ニューヨーク支局を経て、2000年にロフトワークを共同創業。デジタルものづくりカフェ「FabCafe」などを運営するほか、森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)」を岐阜県飛騨市で設立するなど、多彩に活動。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017」など受賞多数。
株式会社ロフトワーク  https://loftwork.com/jp/

重松 象平(しげまつ・しょうへい)

建築家、建築設計事務所OMAのパートナーおよびニューヨーク事務所代表。1973年、福岡県生まれ。九州大学工学部建築学科、オランダのベルラーへ・インスティチュートを経て、98年よりOMAに所属。2006年、ニューヨーク事務所代表に就任。主な作品に中国中央電視台(CCTV)新社屋、コーチ表参道フラッグシップストア、ケベック国立新美術館新館など。ボストンのウォーターフロント再開発、コロンビア・ボゴタの新都心マスタープランなど、都市計画にも携わる。ハーバード大学デザイン学部大学院客員教授。
OMA(Office for Metropolitan Architecture)  http://oma.com
OMA New York Office Instagram  https://www.instagram.com/omanewyork

AIが導く、建築と都市の次なるビジョン

AIが導く、建築と都市の次なるビジョン

──AI(人工知能)などテクノロジーの急速な発展を受けて、働き方や暮らし方、都市のあり方などが、大きな変革を迎えようとしています。人間としてどのように時間や空間と向き合うのかが、いま問われているのかもしれません。

──AI(人工知能)などテクノロジーの急速な発展を受けて、働き方や暮らし方、都市のあり方などが、大きな変革を迎えようとしています。人間としてどのように時間や空間と向き合うのかが、いま問われているのかもしれません。

その点で言えば、私が大好きなこのミヒャエル・エンデの本『モモ』(※1)は、まさに時間をテーマにした本です。私がこの物語でいちばん好きなエピソードは、ほうきのひと掃き、ひと掃きに楽しみを見いだしている道路掃除夫の話です。でも時間泥棒に遭ってからは、せかせかと仕事に追われるようになってしまう。時間との接し方によって、仕事や生き方が大きく変わってくるわけです。そういう意味でも私は、意志ある個人の営みを支えるような建築や都市のあり方とは何かを、空間的に解き明かしたいと思っています。

ミヒャエル・エンデ『モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語』(岩波書店)(林氏私物)
ミヒャエル・エンデ『モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語』(岩波書店)(林氏私物)
(※1)『モモ』...ドイツの作家・思想家ミヒャエル・エンデによる児童文学作品。人々の時間を奪う時間泥棒と少女モモの物語を通して、時間そして人生の価値について問いかける傑作として名高い。
(※1)『モモ』...ドイツの作家・思想家ミヒャエル・エンデによる児童文学作品。人々の時間を奪う時間泥棒と少女モモの物語を通して、時間そして人生の価値について問いかける傑作として名高い。

重松

その解は、いまある都市の形からは生まれてこないのではないでしょうか。ネットワークの発達やAIなどによってライフやワークのあり方が大きく変わろうとしているにもかかわらず、いまの都市は高い密度で人が集積して住むことで恩恵がもたらされるという、近代の理想を引きずったままです。Googleのエンジニアであるレイ・カーツワイルは、VR(ヴァーチャル・リアリティ/仮想現実)を駆使した対話システムの臨場感が増していき、リアルな会話と遜色がなくなれば、人が都市に集積する意味はなくなると言っています。
AIといえば今年、建築雑誌の『新建築』が主催するコンセプチュアルな住宅コンペ「新建築住宅設計競技」の審査員を務めるにあたって、テーマを「AIの家」にしました。その背景には、人々が建築家ではなく、過去の膨大なデータに裏付けされたAIの設計提案を受け入れるようになる前に、AIと建築の関係のあり方についてきちんと考えておくべきだという思いがあります。ライフ&ワークのバランスはもちろん、生活や街のあり方まで、インターネットの登場よりもはるかに本質的な変化が、AIによってもたらされると思います。その結果、人間同士が生で触れ合う機会が失われるのか、逆に主体性を持った人たちが楽しく集う桃源郷ができあがるのか...。

新しい働き方/暮らし方をめぐる現代の冒険

新しい働き方/暮らし方をめぐる現代の冒険

その"桃源郷"は、すでに小さな形で実現しつつありますよ。私が心を動かされたのは、ブルックリンのco-op(コープ/協働組合)です。組合員たちが自発的にそれぞれの特技を分担して、仕入れから陳列、在庫管理、レジ打ち、働いている人の子守りまでを自分たちで賄い、共生している。その様子を目の当たりにして、より大きなスケールで住民それぞれが自分の特技を活かして働き、暮らすことのできる社会の到来を予感しました。その頃にはAIが才能ある人と人、特徴のある街と街とをマッチングしてくれるかもしれないし、仮想通貨であるビットコインやそれを支えるブロックチェーンのように、お金に関わる新しいテクノロジーもその基盤になってくれると思います。

川喜田二郎『発想法―創造性開発のために』(中公新書)(林氏私物)
川喜田二郎『発想法―創造性開発のために』(中公新書)(林氏私物)

また、私が大切にしている"冒険と創造"の視点から言えば、こうした新しい仕組みづくりは現代における"冒険"のひとつだと思います。その手引き書になるのが、川喜田二郎(※2)の本『発想法―創造性開発のために』。この本によれば、机の上での思考は「書斎科学」。そこから生まれた推論を実験・検証するのが「実験科学」であり、近代欧米におけるエンジニアリング。そしていまこそ重要なのが、創造性を生み出す「野外科学」。自ら探検に出て、観察し、発想する姿勢が何より大切だということですね。この力をもっと社会に埋め込んでいかないといけないと思っています。 (※2)川喜田二郎(1920-2009年)...地理学者、文化人類学者。自身のフィールドワーク経験をもとに、アイデア発想法として有名な「KJ法」を編み出すなど、数々の功績で知られる。 (※2)川喜田二郎(1920-2009年)...地理学者、文化人類学者。自身のフィールドワーク経験をもとに、アイデア発想法として有名な「KJ法」を編み出すなど、数々の功績で知られる。

重松

このところ「イノベーション」という言葉がもてはやされる一方で、「インベンション(発明)」という言葉や考え方が退化しているように感じます。新たな発明につながる「目的は曖昧でも、何かを探求する」という行為を、いまの社会は容認しにくくなっているのかもしれません。

その意味で私が注目しているのが、生命のように新陳代謝する都市のシステムとしての「メタボリズム」(※3)です。いま改めてメタボリズムの思想を問い直したなら、その考え方は森にもつながってくると思います。自然の力によって人間は生かされているという、ある種の日本人的な発想を、まちづくりでも活用してほしいなと思いますね。 (※3)メタボリズム...1960年代を中心に注目を集めた日本の建築運動。都市の過密化や空間需要に対し、細胞の新陳代謝(メタボリズム)を模したユニット建築のビジョンを提示した。 (※3)メタボリズム...1960年代を中心に注目を集めた日本の建築運動。都市の過密化や空間需要に対し、細胞の新陳代謝(メタボリズム)を模したユニット建築のビジョンを提示した。

重松

そこはぜひ、一緒にやりましょう。働き方や暮らし方、都市のあり方をいかに再定義していけるか。いまの都市とはまったく違った発想で、テクノロジーの力を借りながら新たな都市と人間の関係を考えていく必要がありますね。

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