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広大な緑地を活かして地域と密に連携
品川地域の賑わいづくりに貢献
~品川シーズンテラスを起点としたエリアマネジメント~

2015年5月の開業から2年余り。品川シーズンテラスでは、敷地内の広大な緑地を利用して、オープンシアターやウォーターテラス、ヨガなど、人気のイベントを年間約100回のペースで実施しています。品川シーズンテラスは、東京都の水処理施設の上部利用事業を落札して建設したもので、水処理施設の上部空間は、都心に残された貴重なオープンスペースとして、地域の核としての活用を求められていました。NTT都市開発はこの使命をいかに果たしていくのか。これまでの取り組みや今後の方向性を担当者が説明します。

内山担当課長の写真
商業事業本部
品川シーズンテラス総合管理事務所
担当課長

内山 武士
渡辺担当課長代理の写真
商業事業本部
品川シーズンテラス総合管理事務所
担当課長代理

渡辺 宏紀
宮城社員の写真
ビル事業本部
品川シーズンテラス総合管理事務所


宮城 悠
村上マネージャーの写真
品川シーズンテラスビルマネジメント(株)
管理部運営担当
マネージャー
村上 博隆

地域の活性化に向け、3つのコンセプトでまちのブランドづくり

まずは品川港南エリアの位置付けや、エリアマネジメントの基本方針について聞かせてください。

NTT都市開発は、大手町や秋葉原で培ったまちづくりのノウハウを活かすべく、芝浦水再生センター再構築にも名乗りを上げました。そもそも、まちづくりはデベロッパーの事業目的の一つですが、都からもまちの賑わいづくりを求められており、開業後はイベントなどを通じたエリアマネジメントに力を入れてきました。

品川シーズンテラスが立地する品川駅港南口エリアは、工場街、倉庫街として発展してきた歴史があります。現在は駅前の再開発も進み高層ビルが立ち並ぶ日本有数のオフィス街となりました。空港へのアクセスがよく、山手線や東海道新幹線が通り、2027年にはリニア中央新幹線も開通予定と、交通の要衝でもあります。

しかし、開発当初、休日に訪ねたいまちになっているかといえば疑問でした。一般に「品川」というと、ホテルなどが立ち並ぶ高輪口をイメージする人が多いのではないでしょうか。品川の港南口方面は、「働く」以外のデスティネーション(まちを訪ねる目的)が希薄でした。

そのため、「住まう」「遊ぶ」まちとして見た時に「色が付いていない」まちであるともいえます。六本木なら"ラグジュアリー"、日本橋なら"伝統"、といったイメージが品川にはないので、これから新しいブランド「新品川スタイル」を築き上げることができるのです。

品川シーズンテラスを起点に、港南地域が発信していく「新品川スタイル」とは、どのようなものですか?

一言でいうなら"未来感"です。その実現のために3つのキーコンセプトを定義して活動しています。1つ目は「テクノロジー」。品川には大手テクノロジー企業が本社や重要拠点を構えていますし、「革新的な先端技術が集まり、さらに創出されること」、「それらを気軽に、楽しく体感できること」が強みです。

2つ目は「グリーン」。品川シーズンテラスのイベント広場と隣接する芝浦中央公園とを合わせると3.5haもの芝生エリアが広がっています。都心に近いロケーションで、整備された緑地を活かし、「都心で働きながら、住まいながら、緑や水辺を感じて心地よく過ごすこと」、「環境を大切にする考え方や行動が根付いていること」が大きな魅力です。

3つ目は「オープンネス」。空港へのアクセスや新幹線駅がある品川は国際色豊かなまちです。年齢や性別、国籍が異なる者同士でも、企業同士でも、隔たりなく自由にコミュニケーションが取れる場所であるべきだと考えます。「国内外のさまざまな人・企業が出会い、カジュアルに交流し新たな価値が生まれること」、「人情味・人間味あふれる活動が活発なこと」も、品川ならではの特徴といえます。

これら3つのキーコンセプトに関連した活動を行い、品川で働くこと・品川に住まうことが、もっとわくわく・楽しく・心地よくなる「新品川スタイル」を発信しています。

3つのキーコンセプトは実際の活動にはどう具現化されているのですか?

このキーコンセプトを根付かせるために、品川シーズンテラスでは、イベント広場を中心に、定期的なイベントを年間約90回、四季に合わせた大規模なイベントを約10回、合計100回ほど実施しています。当然、イベントの方向性や内容はキーコンセプトに沿ったものです。

品テクマルシェ on the GREEN 2017の写真
品テクマルシェ on the GREEN 2017

開業日を迎えたその週末に初開催した「品テクマルシェ」も、まさしく3つのキーコンセプトに沿ったイベントでした。「テクノロジー」を切り口に、緑豊かなイベント広場を使って、老若男女誰もが楽しめる企画です。最先端技術を用いたゲームや体験型の展示、ものづくりをテーマにしたワークショップなどが人気で、毎年の恒例企画になりつつありますし、関連イベントも増えています。

イベントを通じた認知拡大、季節感やSNSとの親和性がキーに

イベントの企画段階で注意しているのは、どんなことでしょうか。

品川シーズンテラスというビル名の通り、季節に合わせて考えています。例えば夏には水を使ったウォータースライダーを芝生の上で楽しめるなど、都心ではなかなか体験できない特別感と意外性があって、かつ四季が感じられるイベントをそろえています。単発の思い付きではなく、年間を通じて、どの季節にどんなことをするのか、どのようなイベントが地域に根付くかを検討し、イベントの開催時期が近付けば、前年の反省を踏まえて改善するなど、具体的に計画を練っていきます。

まちに賑わいを生むためのイベントですから、女性限定など、参加に制限がかかるものは企画しません。子どもに喜ばれる、大人が楽しめる、というようにゆるやかにターゲットを定めながら、各イベントに取り組んでいます。

また、SNSでの投稿・拡散を意識して、思わず写真を撮りたくなるフォトジェニックな雰囲気や世界観をつくり出すようにしています。オープンシアターで『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』を上映した際は、ツタンカーメンのかぶり物を用意したり、『ジュラシック・ワールド』であれば恐竜の化石のレプリカを借りてきて展示したり、恐竜の着ぐるみに登場してもらったりしました。

SNSによる口コミはまちの活性化にとって効果が大きいのですね。

オープンシアターでは、特定のハッシュタグをつけてSNSに投稿してくれた人に、写真をその場で印刷するサービスも提供しましたが、利用者が300人弱だったのに対して、投稿されたコンテンツを見たというリーチ数は約8万人を超えるほど、大きな拡散力がありました。特に、若い人たちにも情報を届けられることがありがたいですね。若いカップルやファミリーに加えて、これまで品川港南エリアとは縁がなかった高校生や大学生の来場も増えてきています。いまや、SNSもコミュニティ形成の大きな一助となっています。

オープンシアターの写真
さまざまな世代が来場する「品川オープンシアター」
映画に関連して開催したイベントの写真
映画に関連したイベントを開催

2017年1月に開催した「品川やきいもテラス」は想定を大きく上回るお客様がいらっしゃったとお伺いしています。

「全国の絶品やきいもが野外コタツで楽しめる!」と銘打たれ2017年1月に開催された、やきいもテラスの告知ポスター
やきいもテラスの告知ポスター

当初の想定は1週間で2,000人程度だったのですが、初日に3,000人ほどの来場があり、1週間で約3万人に達しました。広報面では開業から3年間を品川シーズンテラスの認知拡大の期間と位置付けていて、1年目はWeb媒体を中心に売り込んだのですが、やきいもテラスはSNSで口コミが広まると、テレビ番組でも取り上げられて、ますます来場が増えました。

ただ、人気のあまり、300円の焼きいもを1本買うのに3時間ほど並ぶといった事態も発生しました。風がよく通る場所で真冬の開催でしたから、寒さは本当に厳しかったですね。事務局で急遽、使い捨てカイロを数千個購入し、行列のお客様一人ひとりに「お並びいただいてありがとうございます」と手渡しで配りました。お子様がいらっしゃれば、飴や風船などもお渡しして、ご来場者に少しでも気持ちよく過ごしていただけるよう努めました。

地元住民の満足と来場者の満足を両立させるイベント設計

屋外のイベントには、特有の難しさもあるのでしょうか。

屋内のイベントは当日まで成否がまったく読めない、ということはまずありませんが、屋外のイベントは天候に左右されて0点にも120点にもなりえますので、その心配は当日まで付きまといますね。

オープンシアターは、当初想定の500人を大幅に上回って、最近の開催では上映当日に6,000人ほどが来場され、キッチンカーで提供されるフードやドリンクを楽しんだり、上映前の関連ワークショップに参加したりされています。映画を鑑賞される方々も2,500人を超えます。こうなってくると、小雨などで中止にすると、すでに集まっていた方々をがっかりさせてしまうかもしれません。一方で、安心・安全は何にも優先すべき事項ですし、天候の判断は難しいですね。

現在の品川シーズンテラスは、 "何かのついでに寄る"場所ではなく、イベント来場者のほとんどが、イベントだけを目的に足を運ばれます。主催者としては、そのことをしっかりと受け止めなければなりません。荒天で、予定していた企画のほとんどを中止にせざるをえない場合にも、たとえ企画内容の10%ほどだとしても、来場された皆様には何かをお届けしたいと考えています。

ほかにもイベント開催に関して、苦労している点や注意している点はありますか?

屋外イベントですから、注意すべきは主に来場された皆様のケガやイベント実施に伴う音の大きさでしょうか。まず、商業事業本部の企画に対して、そうした問題の発生を防げるように、予めビル事業本部やビル管理会社から注意事項を指摘します。また、いざイベントが開催される時には警備班が待機しますし、消防や警察とも連携を取って不測の事態に備えます。大きな音で近隣にご迷惑がかからないよう、オープンシアターなどはリハーサルも入念に行います。

特に注意しているのは、イベント広場にある「カナル」と呼ぶ水景設備ですね。鑑賞用の水盤ですので、お子様が立ち入ってケガをされないように、特にイベント時は目配りを欠かしません。小さなお子様に直接、警備員が対応するのではなく、なるべく保護者の方にご説明する形で事故防止に努めています。ハード面では、開業当初、この水景設備の天端(てんば:最上面)は滑らかな本磨き仕上げでしたが、都内の公園などを視察して学び、表面が毛羽立ったような仕上げにして滑りにくくしました。

テナントとエリアマネジメントとの関わりはどうなっているのでしょうか?

品川シーズンテラスの人口のほとんどはオフィスワーカーの方々ですから、エリアマネジメントへの理解や興味を喚起していきたいですね。モーニングランやナイトヨガなどには出社前や退社後に参加される方も増えているので、今後もテナントの皆様に喜んでいただけるイベントも催行しつつ、イベント参加をきっかけにしたテナント間のコミュニティづくりを促すような仕掛けも考えていきたいと思っています。

「ローカルファースト」を旨とし、地域主体のイベントにも協力を

イベント以外のエリアマネジメント活動にはどんなものがありますか?

「ローカルファースト」を合言葉に、日頃から地域とのつながりを大切にしています。エリアマネジメント事務局では、地域にお住まいの皆様や、地域の企業、商店会、自治会、振興会などと密にコミュニケーションを取っています。

また、港南エリアを広く面で捉えて活性化していくため、近隣の地域でエリアマネジメントを担当している団体とも連携を図っています。

地域との連携で、具体的な事例があれば教えてください。

10月末の「品川ハロウィン」が好例です。このイベントは地域が主導で実現しました。日頃からイベントに来てくださるマンション自治会の方から、品川シーズンテラスでハロウィンイベントを行いたいとのご要望があり、ほかの自治会からも同様の声があったので、地域の皆様が企画し、NTT都市開発が場所や音響などの設備を提供する、という形で実現しました。

ハロウィンは日本の都市部では、いまやクリスマス以上の盛り上がりを見せていて、六本木や渋谷などで、それぞれまちの個性と結び付いたイベントが行われています。品川港南エリアでは、仮装した子どもたちが安心してパレードできるようなハロウィンをめざしました。

地域の方が集まっての企画会議は、企業で日々行われる会議とは違って、意思決定に時間がかかることもありましたが、"地元手づくり"のイベントができました。2015年、16年と続けて開催して、連携も深まってきています。今後は、ほかのエリアマネジメント団体と連携したり、道路使用許可を取り付けたりして、天王洲から品川シーズンテラスを通って品川インターシティまでパレードのコースを延ばせれば、と考えています。

ボウリングのピンに仮装した参加者の写真
「品川ハロウィン」で仮装している参加者
仮装した参加者を交えた集合写真
「品川ハロウィン」参加者の集合写真

最後に今後、品川港南のエリアマネジメントで実現していきたいことを聞かせてください。

今後は、活動の場所をもっと広げていきたいと考えています。例えば、地域にお住まいの方々のニーズを行政に伝え、品川シーズンテラスと芝浦中央公園をつなげた広大な緑地を使ったイベントを開催するなどです。地域の方が何を望んでいるのか常にアンテナを張り、地域との連携を図ることは大切にしていきたいですね。

ほかのエリアマネジメント団体との連携も、課題の一つです。駅周辺の商業施設が集まる連絡会では、エリアマネジメントに対してまだまだ熱意にバラ付きがあるのを感じますが、興味を示される企業・団体もありますので、そうした主体との連携をじっくり進めていきたいと考えています。

また、現在は任意団体であるエリアマネジメント事務局を、将来は社団法人化するなどして、信頼性を高める構想も持っています。そうすることで、道路や広場などの公共空間も含めたマネジメントが可能になれば、より地域に寄り添った活動ができるはずです。

品川港南エリアの次のターニングポイントは、山手線新駅の開業(2020年に暫定開業)だと考えます。他社エリアマネジメント担当チームとも会合を重ねて、情報交換をしています。事業の上では競合する立場ですが、まちの回遊性が高まることは歓迎すべきことなので、切磋琢磨して地域を盛り上げていきたいと思います。