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「働き方を変え、暮らし方を変える」
新しいワークスタイルの複合施設
~HIVE TOKYO~

シェアオフィスとサービスアパートメントを組み合わせた新しいコンセプトの施設HIVE TOKYOは、東京・九段の靖国神社に向かい合う場所で2015年8月にオープン。NTT都市開発として初めて既存オフィスビルのリノベーションとコンバージョンに同時に取り組んだ事例でもあります。ITの急速な進化、グローバル化の進展などにより働き方や住まい方が変化する今、HIVE TOKYOではどのように時代に対応しているのでしょうか。取り組みの経緯や込めた思いについて、主体となってプロジェクトを進めた若手担当者3人が説明します。

HIVETOKYO外観の写真
外観
HIVETOKYOから望む靖国神社の写真
開放的な眺望

HIVE TOKYOのリノベーションとコンバージョン

リノベーションは、「建物に新たな価値を加え、再生させること」を指します。一方、コンバージョンは、「既存の建物の用途を変更して再利用すること」です。HIVE TOKYOは一般的なオフィスとして使われていた建物を、シェアオフィス部分はリノベーション、アパートメントはコンバージョンした複合施設です。

東京のど真ん中にある、オフィスビルをコンバージョン

HIVE TOKYOを世に出したことには、どのような背景や狙いがあったのでしょうか。

社会のニーズに対応するために、常に新たな事業を模索していくことが私たちの使命です。今、グローバル化が進展し、ワークスタイルやライフスタイルが急激に変化しています。オフィスビル事業や住宅事業を行うNTT都市開発として、そうした社会の変化にどのように対応していくかという課題がありました。
また一方で、地球環境保護の観点からも、建築物が古くなれば解体して新しいものを建設する「スクラップ&ビルド」の繰り返しでよいのか、という、デベロッパーとしての疑問もありました。
これらのニーズに対する、総合的かつ新たな提案がHIVE TOKYOです。

HIVE TOKYOは、働き方や住まい方の変化に対応した複合施設です。現在、1カ所にたくさんの人が集まって働くという従来の形から、複数の拠点で少人数のグループが働き、また集団同士が自由にコラボレーションし合うという、新しいワークスタイルに変わってきています。グローバル化が進み、インバウンドや海外から来て日本で事業をスタートさせる起業家も増えています。
また、「シェアハウス」や「シェア企業寮」といった新しい住まい方が、若者を中心に定着し始めています。こうした変化を捉えた施設を、適した場所に設けていくことは、社会的にも大きな意味を持つのではないでしょうか。

HIVE TOKYOの「HIVE」にはミツバチの巣、あるいは多くの人で賑わっている場所、という2つの意味があります。このビルで多くの人が育ち、働きバチとして世界中と日本を行き来し、最後には巣立って行ってほしいという思いを込めました。
HIVE TOKYOを利用される方々が触発し合うことで、人材が育成され、企業としての成長も実現していけば、というのが私たちの願いです。私たちは、HIVE TOKYOのスローガンとして、「働き方を変え、暮らし方を変え、世界を変えていく」を掲げています。

インタビューに答える、宋慎一郎社員の写真
青山開発部、ビル事業本部 開発戦略部 兼務
宗 慎一郎
インタビューに答える、吉川圭司社員の写真
住宅事業本部 分譲事業部 建築企画担当
吉川 圭司
インタビューに答える、石橋一希社員の写真
ビル事業本部 NTT CRE推進部
石橋 一希

プロジェクト立ち上げの経緯は、どのようなことだったのでしょうか。

2013年11月、NTT都市開発として新しい事業を模索するため、開発戦略部という部署が新設されました。まったく新しい取り組みを考えることが目的ですので、まずはプロジェクトチームを立ち上げる必要があります。そこで社内公募を行った結果、オフィス事業、分譲事業という異なる部の担当者から構成される、横断的なチームが発足しました。また、既成概念にとらわれず、柔軟な思考で取り組むために、若手中心のメンバー構成となりました。

プロジェクトではまず「オフィスの新しいカタチとは何か」を探るために、3〜4カ月間、競合他社を含むさまざまな方にヒアリングを行いました。その中で見えてきたのが、今の世の中には非常に多種多様な働き方のニーズがあるが、全てのニーズが十分には満たされていない、という現状です。ここから、「さまざまな働き方を実現する」という考えが、私たちの出発点となりました。

また、ヒアリングの中ではもう一点、新しいサービスを行っている会社は、賃貸だけでなく、オーナーとして事業の運営まで行っているケースが多いことにも気づきました。そこで、私たちのプロジェクトでも、建物の運営までを視野に入れて検討を進めました。

既存建物の活用という着想は、初めからあったのでしょうか。

新しい事業を始めるにあたり、既存の建物を活用するのが一番の近道であるという考えがありました。そこでさまざまな既存物件を探し、このオフィスビルが、最も魅力的でチャレンジの余地があると考え、既存建物の特徴や魅力を活かしたコンバージョンをしていくことにしました。
アイデアを出し合うなかで、ドミトリーホテルとシェアハウスの複合施設という案もありましたが、多角的に検討した結果、シェアオフィスとサービスアパートメントの複合施設という方向へと軌道修正しました。

外国人ビジネスマンをターゲットにした「働く場」と「暮らす場」を兼ねた複合施設

HIVE TOKYOの特徴はどのようなことでしょうか。

10階建ての建物内に、シェアオフィスやSOHOなどに対応できる家具付きオフィスを3種類、中長期滞在に対応するアパートメントを3室備えています。なお、上層の9階、10階はロビーやミーティングルームといった、入居者全員が利用できる共用スペースとしています。このように、「働く場」と「暮らす場」を混合(コンプレックス)させた点が大きな特徴です。

デスク、チェアなどがついたオフィスの写真
家具付きオフィス
家具なしオフィスの写真
自分好みにレイアウトできるオフィス
ソファーベッドのあるオフィスの写真
家具とソファーベットもついたSOHO
パーティションで仕切られたデスクが並んでいる、シェアオフィスの写真
シェアオフィス
家具付きアパートメントの写真
家具が完備されたアパートメント
9Fロビーの写真
開放感のある9Fロビー

上層階を共用スペースとした理由は、この建物の一番の魅力である眺望を、建物のすべての利用者で共有可能にするためです。特に、9階のコミュニティテラスや靖国神社の豊かな緑が眼下に一望でき、桜の季節には見事な景色が堪能できます。

9Fコミュニティテラスの写真
9Fコミュニティテラス
コミュティテラスからの眺望の写真
コミュティテラスからの眺望

この建物がオフィスビルとして使われていた間、数年空室が続いていました。不動産業界では一般的に、上層階を高い賃料にして貸し出しますが、HIVE TOKYOでは上層階をあえて共用部とし、1階から8階までは一定の賃料としました。特に価値の高いスペースを全館共用とすることで、建物全体の利用価値を高めることをめざしました。

8Fミーティングルームの写真
8Fミーティングルーム
4Fシャワーブースの写真
4Fシャワーブース

どのような方々にご利用いただくことを想定していますか。

メインターゲットは外国人ビジネスマンです。例えば展示会で来日した際や、日本法人立ち上げのためのリサーチで日本に中長期滞在する際などの拠点となるほか、サテライトオフィスとしても活用できます。そのほか少人数でビジネスを始める若い起業家なども視野に入れています。アパートの部分は外国人観光客、留学生などを想定していました。

ターゲットに外国人を据えた理由は、一つには、建物の前に靖国神社があり、外国人好みの日本らしい美しい眺望があることです。
また、インバウンドの人気スポットを調べると、空港や観光地などの多くの場所に少ない電車の乗り換えで行くことができます。物件は駅から徒歩10分ですので、アクセスが非常によいわけではないのですが、外国人の視点で考えると、行きたい場所へのアクセスがよい好立地ということになります。さらに、周囲に外国の大使館が密集しており、エリアとして外国人を受け入れるベースが整っていることも、外国人をメインターゲットにした大きな理由です。

HIVE TOKYOを起点に東京から世界へ

建物の企画から施工、運営面まで、どのような考え方で行ったのですか。

今回のプロジェクトのルールとして、4つの項目を取り決めました。「1、自分たちで企画し、自分たちが主体になって動く」「2、既成概念にとらわれず自由に発想する」「3、スピーディに進める」「4、作って終わりではなく、運営に関わる」ということです。
このルールを念頭に置いて、事業や空間デザインの企画といった全体に関わる決定を行うほか、内装や運営面のプランニングについても外部協力会社の皆様とよく話し合いながら進めました。

外国人のお客様に喜んでいただけるよう、和モダンをコンセプトとしながらも、木のぬくもりのなかでくつろげるような空間をめざしました。とくにこだわりのある点が、9階のロビーにしつらえた、ウォールナットの一枚板でできたベンチです。都内で方々を探しましたが、気に入った素材が入手できず、最終的には九州から取り寄せました。
壁面に飾ったアートも私たち自身で選びました。10階のロビーには、写真家・高木康行氏による秋葉原UDXの写真を掲げました。
雰囲気を出すために室内に飾っている「HIVE TOKYO」のサインレターは、メンバーがニューヨークのマーケットで見つけ、自分で運んできたものです。
このように、空間を構成する細かい要素まで、私たち自身で一つひとつ吟味しています。

ウォールナットの一枚板でできたベンチの写真
ウォールナットの一枚板でできたベンチ
H、I、V、E、T、O、K、Y、Oのサインレターの写真
メンバーがニューヨークのマーケットで見つけたサインレター

プロジェクトチームが運営面に関わることで、蓄積されたノウハウやデータを今後の展開に活かすことができます。運営会社とは密に連絡を取り合うとともに、入居したお客様ともコミュニケーションを取る機会をつくっています。また、NTT都市開発ビルサービスの中に新チームを立ち上げ、運営のノウハウを蓄積する体制も整えました。

運営開始から約1年経ちますが、反響はいかがですか。また、実際に運営して、予想と異なった点はありますか。

業界誌などに取り上げられたためか、他社からも問い合わせが多数あり、大きな反響があったので驚きました。シェアオフィスだけ、アパートメントだけという例はよくありますが、両者を組み合わせたサービスは他にないのかもしれません。「新宿や渋谷ではなく、市ヶ谷」という場所柄にも意外性があったようです。

入居率も高く、順調に運営できていると思います。若い方に利用いただけることを想定していましたが、幅広い年齢層に利用いただいています。また予想通り外国人旅行者も多いのですが、遠方に本社がある企業のお客様が、東京出張の際の拠点として借りているという例もあります。

今回のプロジェクトによって、今後の新たな展望が開けたのでしょうか。

プロジェクト担当者3名の集合写真。左から吉川社員、宋社員、石橋社員。

私たちにとって初めての試みでしたので、思うようにいかない場面もありました。特に、前例のないサービスであるため、運営を担当するパートナー企業がなかなか見つかりませんでした。企画自体が頓挫するかもしれない、という危機感もありましたが、いっぽうで「小さくてもいいから、絶対に新しいことを実現させなければ」という思いを持って、最後までやり遂げました。また、最終的に協力していただけることになったパートナー企業の方に、「利益も大切ですが、それ以上に新しいことに挑戦することに意義があります」と言って協力していただけたことが、大きな励みになりました。

今回は実験的なプロジェクトとして取り組みましたが、一定の評価を得ることができたと考えています。次の段階として、異なるエリアや規模で展開したり、大規模な再開発などにHIVE TOKYOをモデルとする施設を組み込んだりすることも視野に入れています。例えば、ベンチャー企業の育成の場や、地域を活性化する場としてHIVE TOKYOモデルを活用できる可能性もあります。これらを含む幅広い可能性について、今から検討を進めて行きたいと考えています。