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ビルの防災・BCP対策に力を注ぎ
地域の中心としての役割を果たす
~秋葉原UDXの「安心・安全」の取り組み~

東日本大震災や鬼怒川決壊、熊本地震など、大規模な自然災害が相次いだことを背景に、近年、社会の防災意識は総じて高まりつつあり、オフィスビルにおいてもBCP(事業継続計画)がますます重視される傾向にあります。NTT都市開発では、特に本社が入居する秋葉原UDXを、企業としての防災やBCPへの姿勢を具現化する場として活用し、新たな施策を積極的に導入しています。ビル事業本部の担当者や秋葉原UDX総合管理事務所の担当者が、取り組みについて説明します。

川端室長の写真
ビル事業本部
災害対策推進室 室長
川端 秀樹
原田主査の写真
ビル事業本部
事業企画部 運営管理担当 主査
原田 翔太
越智グループ長の写真
秋葉原UDX総合管理事務所
施設管理グループ グループ長
越智 理哲
平野社員の写真
秋葉原UDX総合管理事務所
施設管理グループ 建物・設備担当
平野 智史

地域社会からもお客様からも求められる防災・BCP対策

秋葉原UDXは、法定以上の自主的な防災訓練や関連情報の発信など、防災やBCP対応に熱心に取り組まれている印象ですが、背景にはどのような考えがあるのでしょうか?

秋葉原UDXは、もともと青果市場があり人が多く集まっていた土地を、NTT都市開発が再開発した経緯があります。そうした歴史にかんがみると、秋葉原UDXには地域の中心的な役割を果たす使命があるように思われます。当然、地域貢献の一環として、防災にも力を入れるべきだと考えます。

2011年3月11日、東日本大震災が発生した折は、自宅に帰れない多くの人がロビーに集まり、一夜を明かしました。秋葉原への来街者に対しても、安心・安全の期待に応えなければという考えもあり、NTT都市開発は2013年1月、秋葉原UDXなどを帰宅困難者受入施設とする協定を千代田区と締結しました。

防災への取り組みは、地域貢献を第一に考えて行っているのですね。

それは間違いありません。ただ、地域貢献すべきという使命感以外にもNTT都市開発が取り組む理由はあります。以前は防災というと、義務感が先行しがちだったと思います。

その一方で、NTT都市開発のテナント様を対象にしたCS(顧客満足)調査によると、CSに対する寄与度の4割以上を、セキュリティーを含めた安心・安全が占めています。トイレが清潔、エレベーターの待ち時間が短い、といったことの前提として、安心・安全が重んじられているのです。

また、海外の投資家や日本への進出企業は、「自然災害の多い日本ではオフィスビルも含めて当然、災害対策が十分にされているはずだ」と考えています。逆に対策がされていないビルは、投資先としても進出先としても選ばれません。防災や災害対策を充実させることは、グローバル社会において、お客様に選ばれるための必要条件です。

秋葉原UDX総合管理事務所でも、BCP関連の機能についてお客様からお問い合わせをいただくことが増えました。そうしたお問い合わせを受けて、例えば、停電時に非常用発電機からお客様のオフィスへ電力を供給するサービスを用意しました。このサービスは当ビルに本社機能をお持ちのお客様を中心に採用されています。

先進的な取り組みで防災意識の浸透を図る

防災の施策を具体的に考える上で意識していることはありますか?

ルドゥオス参加者が地図を確認している様子の写真
ルドゥオス参加者が防災関連スポット巡っている様子の写真
LUDUSOS(ルドゥオス)参加模様
秋葉原UDXにある防災井戸の写真
秋葉原UDXにある防災井戸

防災というと、若い世代はどうしても堅苦しく捉えがちなので、そうしたイメージを払拭していけたらという思いがあります。そこで、2016年9月には、スマートフォンを使ってゲーム感覚でできる次世代版避難訓練「LUDUSOS(ルドゥオス)」 を秋葉原UDXで実施しました。他地域で開催された「LUDUSOS」を下見した上で、提供元に企業向けのカスタマイズを依頼しました。

今回行ったのは、消防法で定められた訓練とは別に、自主的に開催する防災イベントです。チーム制を採り、スマートフォンのGPS機能を使いながら、井戸などの秋葉原UDX内の防災関連スポットを歩いて回り、そのタイムをチーム対抗で競うものです。この避難訓練は一部メディアでも取り上げられましたし、参加者からも好評でした。

災害時に被災者を救済する形は大きく分けて、自助、共助、公助の3つがありますが、まず大切なのは自助だと考えます。オフィスビルを例にあげると、テナントの従業員の方々が自分で自分を守れていたら、オフィスビル側はほかの対応や対策に手を回しやすくなるからです。テナントの従業員の方々の防災意識を高めること、災害時に自ら対応・対策できるようになっていただくことは、オフィスビル自体の防災力の向上にもつながるのです。

ほかに、テナントの従業員の方々に防災に関心を持っていただくためにしていることはありますか?

テナントの防火防災管理者の方が参加されるミーティングの後、防火シャッターや防火戸が閉まるところを見学していただきました。大きな防火シャッターが動くと迫力があるので、「シャッターの近くに物を置かないでください」と言葉で周知するよりも説得力が高まったと思います。千代田区の地震体験車で震度4~6程度の揺れを体感していただく施策にも多くの人が集まりました。こうした体験型の施策を組み合わせて、防災訓練や共同防災管理協議会を実りあるものにしていくことが大切だと考えます。

また、秋葉原UDXのホームページでは「安心・安全」に特化したページを設け、写真や図を取り入れながら秋葉原UDXの防災機能・性能を紹介しています。より興味を持っていただけるように、水防シートやコジェネレーションシステムなど、普段はお客様が立ち入れない場所にある防災設備の写真も掲載しています。

秋葉原UDXホームページ「安心・安全」コンテンツの画面
秋葉原UDXホームページ「安心・安全」コンテンツ
水防シートを引き上げて設置した様子の写真
水防シート
吸水土嚢の吸水前の写真
吸水前の土嚢
土吸水嚢の吸水後の写真
吸水後の土嚢

このほか、テナント様向けの冊子も用意していますし、秋葉原UDX内のデジタルサイネージでは防災に関する動画を放映しています。デジタルサイネージで放映する動画は、絵と数字を中心にしました。ピクト図解とまではいきませんが、なるべくテキストを少なくし、直感的に理解しやすいものにしました。

さらに、テナント様より参加者を募り、外部の防災施設を訪ねる見学会も計画しています。実際に、江東区有明にある防災体験学習施設「そなエリア東京」への下見も行いました。近い将来には実現できそうです。この見学会を通じ、テナントの従業員の方々の防災意識がさらに高まることを期待しています。

NTT都市開発も秋葉原UDXのテナントの一つですが、社内向けには防災意識を浸透させるために、どんなことをしていますか?

ビル事業本部では社員が防災を「自分ごと化」できるように、「月イチ防災」という啓発活動を始めました。防災に関する記事をわれわれで執筆して、月に1回程度の頻度で社内のイントラネットに掲載するものです。非常食の試食会を開いたり、100円ショップで防災グッズを買いそろえたり、独自企画に挑戦してそれを記事にすることもあります。非常食の試食会には、多数の参加がありました。

昨年は、災害対策本部総合訓練も「月イチ防災」の記事にしました。この訓練は、ビルの防災訓練とは別に年1回行っています。大地震が発生した時、社内に対策本部を立ち上げ、情報を収集・管理してトップの意思決定をサポートするというものです。

こうした社内広報活動の効果は少しずつ表れており、例えば、2016年8月に開催された「夏休みファミリーデー2016」では、子ども向けに用意されたゲーム企画の6割ほどが、防災に関する内容となっていました。別の部署が企画・運営するイベントですから、私たちも驚きましたし、防災意識の高まりをうれしく受け止めました。

夏休みファミリーデー2016で防災クイズにチャレンジする子ども達の様子の写真
「夏休みファミリーデー2016」で防災クイズにチャレンジする子どもたち

まさかの時に行動を共にできるきずなづくり

災害時の共助を促すような、テナント様同士のコミュニティづくりに寄与する施策はありますか?

秋葉原UDXで「LUDUSOS」を実施した際は、物理的に近いテナント様の従業員同士でチームを組んでもらうことで、テナント様間のつながりを生むことができました。災害時にテナント様同士で助け合うにしても、知らない者同士ではなかなか難しいところがあります。日頃からゆるやかに連携できていれば、困った時に助け合えるのではないでしょうか。

また、秋葉原UDXとは別のビルでの話になりますが、各テナントの防火防災管理者の方が参加されるミーティングを少し工夫しました。ミーティングの場では、学校の教室のように前方に向かって机が並ぶ形が一般的ですが、島形に並べ、そこにお菓子を置いて、ミーティングが始まる前に歓談できるような時間を設けました。自然に名刺交換や談笑が始まって、ご参加の皆様にも評判がよかったですね。

地域との連携については、どのように考えて取り組んでいますか?

2007年に千代田区や地域の主だった企業が出資して設立した秋葉原タウンマネジメント(株)にNTT都市開発も参画しています。同社は、歩行者天国や清掃活動の事務局運営、秋葉原UDXの2階にある案内所「AKIBA_INFO.(アキバ・インフォ)」の運営などを手掛けています。防災分野でいえば、秋葉原駅周辺地区帰宅困難者対策地域協力会の事務局も同社が務めています。

秋葉原駅周辺地区帰宅困難者対策地域協力会では、千代田区社会福祉協議会と連携して、毎年3月11日前後に、駅前広場を起点に、帰宅困難者を想定した訓練を行っています。千代田区の設定するシナリオに沿って、防災無線での情報伝達訓練をしたり、帰宅困難者受入施設まで歩くといった内容です。外国人来街者が多い秋葉原の土地柄を意識して、外国人が帰宅困難に陥ったという想定で、留学生を対象にした訓練も行いました。

秋葉原UDXの防災施策を、NTT都市開発のほかのオフィスビルに水平展開することもあるのでしょうか?

災害対策推進室で防災に関する全社的な方針を決定し、各ビル担当者がその方針に沿って個別の施策を練るのですが、週に1回のペースでビル担当者が集まる会議があるので、その場で個別施策についても情報を共有しています。昨年は中小規模の6ビルで、無料Wi-Fiサービスと災害対策支援機能を備えた高機能自動販売機を同時に導入しました。電源供給が途絶えても内蔵電池を使って飲料供給ができ、ダストボックス上部には災害備蓄品を納めた自動販売機です。

最後に、今後の取り組みの方向性や意気込みを聞かせてください。

まず、ビル管理の視点で考えると、テナントの皆様が参加してよかったと思える防災訓練や共同防災管理協議会にしていきたいですね。秋葉原UDXのことを知っていただけるように、有益な情報を提供したり、備品の展示をしたり、実際に見て体験できる場を設けていけたらと考えています。

基本的には、今取り組んでいることの質を高めることが重要だと考えています。例えば、訓練の内容をより実践的なものにしたり、災害時の放送の文言をよりわかりやすいものに変えたり、防災センタースタッフ全員が適切なテンポでアナウンスができるように日ごろから訓練したり。総合管理事務所として防災センターと協力し、そういったところの充実を図っていきたいと考えています。

また、NTT都市開発の防災や災害対策を担当する立場からは、まず社内でさらに多くの社員に、防災に取り組んでもらえるように工夫していくつもりです。「防災に積極的であることがかっこいい」「防災ができる人は仕事のできる人」という価値観を醸成したいですね。そうした価値観を社内に根付かせて、防災に懸命に取り組む社員が数多くいるということを、会社の価値にしていけたらと思います。

秋葉原UDXは、災害時の帰宅困難者の受け入れはもちろん、NTT都市開発の防災やBCPの考え方を具現化していく場としても、大きな役割を負っています。海外からも日本全国からも来街者が多い地域に立地していることの意味も踏まえて、海外対応を含め、今後ますます、防災、災害対策やその周知を充実させていきたいと思います。