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ワーカーの気持ちに寄り添ったオフィス空間づくり
~アーバンネット日本橋二丁目ビル・
アーバンネット銀座一丁目ビル~

2016年に竣工した新しい時代の2つのワークプレイス、アーバンネット日本橋二丁目ビルとアーバンネット銀座一丁目ビル。災害時のBCP(事業継続計画)や省エネ・環境性能はもちろん、働き手の健康や「心地よさ」に配慮し、知的生産性の向上をめざしていることが大きな特徴です。「今日のオフィスビルに求められている新たなカタチとは?」という大きな問いに向き合い、取り組んだ経緯について、2つのビルの物件担当者がご報告します。

アーバンネット日本橋二丁目ビル外観写真(撮影:フォワードストローク)
アーバンネット日本橋二丁目ビル
(撮影:フォワードストローク)
アーバンネット銀座一丁目ビル外観写真
アーバンネット銀座一丁目ビル

ワーカーが居心地よいオフィス空間を追求

IT技術の進化を背景に、働き方もスピーディに、また大きく変わっています。このような時代に、オフィスビルには何が求められるでしょうか。

インタビューに答える、中村社員の写真
商業事業部 開発営業担当
中村 高士
(当時:プロジェクト推進部
企画担当)

1990年代から2000年代にかけて、企業のOA(オフィスオートメーション)化やインターネット社会への急速な移行に伴い、ビル性能自体が企業の生産性を上げる重要な要素として捉えられるようになりました。以来、インテリジェントビル(高付加価値ビル)という形で、ビルは進化してきたわけです。ところが2004年以降、SNSやモバイルコミュニケーションの普及で、ワークスタイルは大きく変化してきました。オフィスがなくても、いつでもどこでも仕事ができる「ノマドワーカー」も増えています。そして、今後もICTのさらなる進化によりワークスタイルは変化し続けることが予測できます。将来、オフィスの定義が変わる可能性もありますね。

では、今の時代が求めている新たなオフィスビルとは、どのようなものか。さまざまなカタチがあると思いますし、1年先、2年先にはニーズが180度変わっているかもしれません。ですが、今回、私たちが出した答えは「ワーカー目線に寄り添い、ワーカーの知的生産性を高めるワークプレイス」です。オフィスで過ごす働き手にとって、ストレスなく健康的に働くことができる、居心地よい空間を追求しました。その結果、企業の生産性が高まればと考えたわけです。

「気持ちがいい」「快適だ」と感じることが、働きやすさにもつながる

アーバンネット日本橋二丁目ビルの開発では、どのように「ワーカー目線」を反映させたのでしょうか。

ワークプレイスのレイアウト図。窓や光ダクトから、多方向の採光が得られる。
オフィスワーカーの快適性・知的生産性を高めるフレキシビリティの高いレイアウト

アーバンネット日本橋二丁目ビルでは、「陽(ひ)のもとに集うワークプレイス」「環境負荷低減」を大きなコンセプトとしました。エントランスホールに据えられた、太陽の光が降り注ぐ坪庭がその象徴となっています。また朝、この坪庭を眺めながら出社するワーカー一人ひとりにとって、環境保全について考えるきっかけになれば、という期待もあります。

坪庭に降り注いでいる光を含めて、基準階ワークプレイスの採光は4面すべて自然採光です。自然採光と人間の生産性の関係については論文でも発表されていますし、純粋に「気持ちがいい」「快適だ」と感じることが、働きやすさにもつながります。

この敷地では、永代通りに面する北側は比較的開けていて、自然光を取り込むことができるのですが、残りの3面は隣地建物に囲まれています。建築構造的な合理性においては、柱スパンを15m程度にとどめ、鉄骨をバランスよく配置することがセオリーですが、そうするとワークプレイスをL字型にレイアウトすることとなり、フロアを分割して使用する際に眺望や採光が得にくいスペースが生まれてしまいます。そこで今回は北側の永代通り面から約25メートルのロングスパンを採用し、整形で使いやすく、バランスがとれたワークプレイスを計画しました。

一方、窓から自然光が到達する距離も15m程度ですので、約1/3のスペースに採光が届かない環境が生まれることになります。この課題を克服するために、当社として初めて取り入れたのが、国内最大級の光ダクトです。光ダクトを専用部と共用部との間に配して南側からも自然採光を確保。熱負荷の高い東西面は小窓を設け、4面自然採光が可能なワークプレイスを実現しています。自然光下での人の生産性に関する論文は多く、米国ではWellBeing認証として、オフィスでの自然光利用を高く評価する社会的な取り組みも始まっています。

建物を上から下まで貫く光ダクトは反射率95%の高反射アルミパネルで覆われており、屋上の採光部から取り入れた直射光を拡散させながら、各階に光をまんべんなく届けます。さらに、高層階と低層階で明るさの偏りが出ないようにスリットの開口率を調整した鏡面パネルを介して、光を取り込む計画としています。光ダクトは太陽追尾などの動力を一切必要としておらず、さらに完全密閉の竪穴空間で設計しており、それによって埃・粉じんによるアルミパネルの反射率低下がなく、メンテナンスフリーの極めてサスティナブルなシステムとなっています。

インタビューに答える、水野社員の写真
プロジェクト推進部 建築担当
水野 義人
インタビューに答える、北野社員の写真
住宅事業本部 分譲事業部
建築企画担当
北野 雅也
(当時:プロジェクト推進部
建築担当)

環境負荷低減についてはどのように取り組んだのでしょうか。

4面から光が入るオフィスの写真
4面採光を実現したオフィス

昨今の新築オフィスビル同様、当ビルでも人感・照度センサーの導入など、さまざまな建築的工夫により環境性能を高め、PAL低減率36.33%、ERR41.02%という高い省エネを実現し、東京都環境局から最高レベルのAAA評価を得ています。その上でさらに、意識的に取り組んでいる点は、光ダクトによる驚くほど明るい自然環境を通じて、照度700lxを下げるためのインセンティブをお客様に提供している点です。実は、オフィス基準照度700~750lxという値は、ある種業界の常識によるところが大きく、数値が下がれば商品として「劣っている」と解釈されることもあり、お客様や販売担当者もそれを是としてきませんでした。しかし、3.11以降さらに、VDT環境が促進している現在にあって、照明の出力を抑える動きは活発化しつつあります。そんななか、光ダクトからの光束量は平均約60,000lmと非常に明るい環境となっており、明るさを伝達するわかりやすいアイコンとして、テナント様に省エネのメッセージを投げかけています。設計時のシミュレーションでは、照度を従来の700ルクスから500ルクス、あるいは300ルクスに下げた場合、照明や空調設備にかかるエネルギーが大きく削減でき、ビル全体で最大約2割の省エネ効果が得られます。これらの数値を快適な環境として実現していくために、今後は入居されたお客様と一緒になって省エネへの取り組みを推進していきたいと思っています。

特に注力した点はどこでしょうか。

光ダクトと坪庭で演出されたエントランスホールの写真(撮影:フォワードストローク)
光ダクトと坪庭で演出されたエントランスホール(撮影:フォワードストローク)

やはり、光ダクトです。このような大規模なビルでは初めての試みだっただけに、大きなプレッシャーを感じていました。コンピューター上でのシミュレーションや原寸を含めたいくつものモデルで実験を行い、その結果を都度設計にフィードバックするような検討を繰り返し、目標を満たす実験結果が出たものの、いざ建築が始まってから竣工までは、計画通りに仕上がるか気をもみました。それだけに、実際に仕上がったビルを見たときの喜びはひとしおでした。そして、お客様からも「光の表情がきれいだね」「明るい」などの好反応を頂くことができました。

各階で違う光の表情

10階の光ダクトから差し込む光の画像
10階
8階の光ダクトから差し込む光の画像
8階
6階の光ダクトから差し込む光の画像
6階
4階の光ダクトから差し込む光の画像
4階

広々と開けた眺望の確保と光の演出により心地よいオフィス空間を創出

続いて、アーバンネット銀座一丁目ビルでの取り組みについてお聞かせください。

高速道路から見えるビル外観の写真
高速道路に面し、視界が確保できる北側

アーバンネット銀座一丁目ビルでは、眺望から得られる開放感と、光の演出で空間にメリハリを持たせることにより「心地よいオフィス空間」をめざしました。銀座一丁目周辺は小規模な建物が密集しているエリアですが、このような場所でありながら、整形無柱の約320坪の執務空間において開けた眺望が得られるという希少性が、ビルの特徴になっています。

部分的に光が差し込む廊下の写真
空間にメリハリを持たせるためにあえて光を絞った廊下部分

アーバンネット銀座一丁目ビルの大きなポイントは配棟計画です。当敷地は、四方に開けた立地であり、メイン通りに面した南側を採光面とすることも可能でした。しかし、北面採光は一年を通して安定的で、かつ熱負荷も小さくオフィスに適しているという点と、高速道路が走っており前面建物がないため将来的にも視界が確保できるという点から、あえてメインの採光面を北側に向け建物を配置しました。

その結果、執務空間では約55メートルの大開口の窓から遠くまで見渡すことができる奥行きのある眺望となりました。この眺望からは、東京スカイツリー、そして夏には隅田川の花火大会も見ることができます。
快適性アップのためのもう一つの工夫が、光の取り入れ方です。空間にメリハリを持たせるため廊下部分などではあえて照明を絞り、オフィス空間に入ったときに、開放感をより強く感じることができるようにしています。

インタビューに答える、小森社員の写真
プロジェクト推進部 建築担当
小森 裕二
インタビューに答える、竹下社員の写真
プロジェクト推進部 建築担当
竹下 あゆみ

どのような部分を、特に大切にしたのでしょうか。

スリット窓から光が差し込む階段室の写真
スリット窓から光が映し込む階段室

共用部においても快適な空間とすることです。廊下やトイレ、階段室にもさまざまな幅のスリット窓を設け、時間や季節によって移り変わる光を映し込むことで豊かな空間をつくり、心地よさを感じていただけるよう工夫しています。また屋外であるピロティと屋内のエントランスを一体に見せることで、広々としたリッチな印象の空間としました。これら共用部をゆとりある空間とするために、屋外に設備バルコニーを設置し床効率を上げています。

エントランスと一体化した屋外のピロティの写真
エントランスと一体化しリッチで広々とした屋外のピロティ
時間によって異なる見え方をする、外壁の写真
時間によって光の変化を感じられる外壁

南の外壁には3種類の異なるリブがついた板と平板をランダムに使用し、光の当たり方によって色の濃淡が出るようになっています。工業流通品の使用でコストを抑えながら、時間帯による光の変化を感じられる外壁に仕上がっています。

屋上テラスの写真
都心の中の開放感を実現したリフレッシュスペース

また銀座一丁目ビルの目玉となるのが屋上のテラスと喫煙スペースです。高速側の開けた眺望を最も享受できる場所であり、ビルのコンセプトである「都心の中の開放感」を強く感じていただける空間であると考えています。さらに、モバイルコミュニケーションによるワークスタイルの変化へ対応し、Wi-Fiを完備しました。リフレッシュ空間であるとともに、ワークスペースの一部としてもご利用いただけます。

喫煙スペースについては、健康のための禁煙が叫ばれる昨今閉鎖的な空間に追いやられがちでした。しかし、働く人すべての健康や生産性向上を考える上では、喫煙スペースもきちんとしたリフレッシュ空間であることが重要と考えました。そこで、壁面の一部に緑化を施したり、分煙対策にも屋外であることを生かして高さを抑えたガラスパーテションを用いたりと、オープンで快適な空間をめざしました。なお、壁面緑化にはリサイクル材を利用した保水性ブロックを使用し、環境にも配慮しています。

新たな基準(スタンダード)の提案

2つのプロジェクトが持つ社会的な"意義"を、どのように考えていますか。

アーバンネット日本橋二丁目ビルでは、光ダクトという、環境保全効果も大きく、汎用性の高い技術を、NTT都市開発のオフィスビルに初めて採用したことに意味がありました。また、大規模な建物に採用したことは、光ダクトを提供するメーカー様にとっても新たな挑戦であり、技術を高めていただくチャンスになったのではないかと思います。今回の取り組みが、光ダクトの技術が社会全体に広まっていく一つの契機になることを期待しています。

もう一つは、基準照明の照度を下げても、自然光を取り入れながら心地よく仕事ができる、という新たな基準(スタンダード)を社会に提案したことです。「照度を落とす=暗い」という先入観を取り払って、オフィスワーカー、そしてビルを利用されるテナント様に、省エネの可能性への気づきを促すことができればと考えています。

日本最大級の光ダクトが自然光を各階に運ぶ仕組み

光ダクトが自然光を各階に運ぶ解説図
光ダクト

屋上採光部(トップライト)

採光部を通過した直射光を拡散光に変換することで、太陽高度の影響を受けにくい設計としている

光ダクト

自然光は高反射アルミパネルで覆ったダクト内を反射しながら各階へ届けられる。スリットから取り込んだ自然光がガラス面を照らす。光量の多い高層階はスリット幅を狭くし、中低層階に行くに従い幅を広くし、各階の明るさに偏りがないように工夫している

自動電話交換発祥の地をイメージしたモニュメントの写真
地域の記録を残すモニュメント

アーバンネット銀座一丁目ビルでは、土地の歴史に敬意を払い、地域の人の思いに配慮した設計を行いました。敷地は銀座ラフィナートというホテルの跡地で、この場所に大切な思い出を持つ方々も地域には多くいらっしゃいます。また、もともとは京橋電話局のあった、自動電話交換発祥の地でもあります。NTTグループとして浅からぬ縁があるわけです。そこで、銀座ラフィナートに設置されていた自動電話交換発祥之地のモニュメントをサイズや素材を変えて複製し、ビルの足元に掲示しています。こうした文化や歴史への配慮、そしてビル全体での環境対策やBCP対策が評価され、「DBJグリーンビルディング2014」で最高ランクの「five stars」認証を頂きました。

最後に、今後の取り組みに向けた考え、意気込みをお聞かせください。

プロジェクト担当者5名の集合写真。後列左から水野社員、北野社員、小森社員。前列左から、中村社員、竹下社員。

社会が変化するスピードがますます増しており、オフィスに対するニーズも刻々と変わっています。私たちは、「顧客目線」を軸に、ワーカーやテナント様が何を求めているかを常に予測し、柔軟に対応していく必要があります。
今回、銀座一丁目ビルでは早い段階でテナント様の要望を伺い、ビルづくりに生かすことができました。またワーカーが何を求めているかのヒントも頂けました。こうしたお客様と一体となった積極的なアプローチも、これからさらに強化していく必要があると感じています。
私たちが手掛けた空間をご利用いただくことを通じて、企業のパフォーマンスが高まり、世界で活躍する企業も増える、そうしたビルづくりをめざしていきたいと考えています。