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文化と創造力を世界に発信する
「原宿駅前プロジェクト」

若者の街、そして文化の発信地であり続ける原宿。その玄関口である原宿駅前で、エリアのランドマークとなる商業・住宅の複合施設の開発に取り組んでいます。2020年春の開業に向けて工事が進行する同施設のコンセプトは「未来に紡ぐ"たまりば"」。原宿という場所の歴史や特徴をどのように捉え、今日的な課題への解決策として昇華させるか。 担当者がご報告します。

杉木利弘の写真
商業事業本部
商業・ホテル開発部 担当課長
杉木 利弘
今村浩太郎の写真
商業事業本部
商業・ホテル開発部
今村 浩太郎

──原宿駅前プロジェクトの概略をご紹介ください。

──まず、原宿駅前プロジェクトの概略をご紹介ください。

今村

1959年に竣工した原宿アパートメンツを含む複数の敷地を一体的に建て替えるものです。この場所は、明治神宮の参道として由緒ある表参道と、若者文化の発信地ともいえる竹下通りとをつなぐ位置にあり、なおかつ高層部からは明治神宮や代々木公園の緑を望むこともできるという、非常に恵まれた立地です。しかしこれまでは、人の行き来は多いものの足を留めることはあまりない場所であり、いわば"空白地帯"となっていました。

原宿駅前プロジェクトでは、単に商業・住宅の複合施設を建設するだけではなく、建物内を通り抜けられるように設計し、表参道から竹下通りへ抜ける新たな動線を生み出そうとしています。今の原宿は、細い路地が複雑に入り組んでいて、表参道と竹下通りの間を行き来しにくいのですが、通り道をつくることで、街の回遊性を高めることをめざしています。その意味で、本プロジェクトの特徴を"道の建築"と表現することもできます。

プロジェクトの立地場所を俯瞰する模型の写真
開発周辺エリア(模型)
開発周辺エリア(模型)

杉木

建物は地下3階・地上10階建てで、店舗やオフィス、イベントホール、住宅、駐車場からなる複合施設です。低層階・中層階・高層階に、3つの異なる要素を配置しています。 低層階は商業施設です。原宿駅に面する表通り側には、施設の「顔」として、知名度の高いブランドの入居を予定しています。一方、建物内の通路や竹下通りに続く小道に沿っては、独立系を含むバラエティ豊かな店舗が並ぶようにする構想です。多くの人が知っているブランド店舗と、コアなファン層に人気のある店舗が併存する、複層構造にしていきます。多様性のある賑わい、街歩きの楽しみといった、原宿らしい魅力を創出していきたいと考えています。 中層階は、イベントホールやシェアスペースのフロアにする予定です。原宿の持つ文化発信地としての性格をさらに強めていきたいと考えています。 そして、高層階は住宅に。大きな特徴は、神宮の森を望む眺望、そして駅のすぐ前という便利さです。駅前にはほかにまとまった住宅がないので、その希少性も魅力になると考えています。

原宿駅から見た建物の外観の完成予想図イラスト
原宿駅から見た外観(完成予想図)
原宿駅から見た外観(完成予想図)

──「未来に紡ぐ"たまりば"」とは、どのようなコンセプトなのでしょうか。

──「未来に紡ぐ"たまりば"」とは、どのようなコンセプトなのでしょうか。

今村

もともと何もなかった土地に、明治神宮の創建に伴って表参道が発達しました。戦後は米軍に接収され、1960年代から1970年代にかけては「原宿セントラルアパート」にクリエイターが集いました。その後も、「竹の子族」から、現在の「Harajuku Kawaii」カルチャーに至るまで、若者ファッションの中心地となっています。世界中から観光客が訪れる地でもあります。原宿駅前プロジェクトでは、このように発展し続けていく原宿にふさわしい、さまざまな才能のたまり場であり、プレゼンテーションの場ともなるスペースをつくりたいと考えました。象徴的なのは中層階に予定しているイベントホールやシェアスペースで、新しいものを発信したい人、興味がある人が集う場となります。なお、たまり場的なスペースという意味では、中央の道を進んでいった先の2階に、ちょっと足を止めてくつろぐことができるテラス空間を設けています。

杉木

コンセプトの立案は2016年から始めました。まずはクリエイターやデザイナーなど、さまざまな分野で幅広い知見のある方々にインタビューを行いました。そのなかで出てきたキーワードを社内でディスカッションして、コンセプトワードを絞り込んでいきました。原宿は、例えばセントラルアパートが原宿文化の醸成地となったように、一人ひとりの活動がやがて大きなトレンドとなり、文化を生み出していく土地です。ここには、一人のカリスマに頼らない草の根の文化があります。本プロジェクトでもその流れをなぞって、いろいろな人と意見交換をして情報収集し、落とし込んでいくという過程を重視しています。コンセプト立案だけでなく、ほかのフェーズでもこのような作業を行っています。

──設計・施工パートナーとして(株)竹中工務店と(株)伊藤豊雄建築設計事務所に参画いただいている背景には、どのような考えがあるのでしょうか。

──設計・施工パートナーとして(株)竹中工務店と(株)伊藤豊雄建築設計事務所に参画いただいている背景には、どのような考えがあるのでしょうか。

杉木

パートナー企業の選定では、開発の考え方を理解し、街全体を捉えて設計できる方にお願いしたいと考えていました。建築家とデザイナーをチームとして捉え、数チームの候補にお声がけをしてオリエンテーションを行い、提案をいただくという形をとりました。

今村

表参道と竹下通りに回遊性を持たせる提案は各社からもあったのですが、原宿の歴史を含めて街を一体として捉え、提案してくださったのが(株)竹中工務店でした。「道の建築」という言葉を使われたのも、(株)竹中工務店です。また、私たちも当初から、街の歴史を大切にしたいと考えていましたが、(株)竹中工務店からも街の歴史を踏まえた提案がありました。例えば、鎌倉時代の文献から、この場所がもとは「源氏山」という小高い丘だったという背景があったため、テラス空間にも"源氏山の再現"という意味合いを持たせて、段々畑のような形状にしています。それぞれの段には植栽を施し、外観イメージを近づけていきます。このように、考え方が私たちと非常に近いと感じたことが、(株)竹中工務店と(株)伊藤豊雄建築設計事務所をパートナーとして選ばせていただいた大きな理由です。

″源氏山の再現″を目指したテラスの完成予想図のイラスト
″源氏山の再現″を目指したテラス(完成予想図)
″源氏山の再現″を目指したテラス(完成予想図)

──プロジェクトを進めていくなかで、どのような点で特に工夫しましたか。

──プロジェクトを進めていくなかで、どのような点で特に工夫しましたか。

杉木

プロジェクト開始当初から時間がかかることを覚悟していたのは、旧建物を利用されていた皆様方や近隣の取得予定地の所有者の方々から同意をいただく過程でした。しかし、実際に進めてみると、想定していたよりはるかに短い期間でご理解をいただけました。信頼できる相手だと思っていただくために、こちらに都合の悪いことも隠すことなく、ありのままを率直かつ丁寧にご説明する姿勢を常に心がけたことがよかったのかもしれません。また、NTTグループが長年にわたり積み重ねてきた社会的信用も、プラスに働いていた気がします。

今村

これは個人的なことですが、私は本プロジェクトに加わった時、まだ入社したばかりの新人だったので、ついていくのに必死でした。プロジェクトの進行状況は日々刻々と変わり、次々と課題が浮上してきて、その都度対応に追われました。「これでは開業が2020年春に間に合わないのではないか」と心配になったこともしばしばありました。今振り返って幸運だったと思うのは、用地にもともとあった原宿アパートメンツを当社が社宅として借り上げており、私自身が一時期入居できたことです。原宿は新しい店舗が次々にオープンする街ですが、実際に住むことでその様子を実感することができました。そうした感覚や経験は、プロジェクトに取り組むなかでじわじわと効いている気がしています。また、私が入居していた時期に、既存の建物を一部利用した官民一体のプロジェクトが進行し、関連ワークショップなどに参加できたのも、街を理解する上で役立ったと思います。

──新施設のハード面には、特徴やこだわりはあるのでしょうか。

──新施設のハード面には、特徴やこだわりはあるのでしょうか。

杉木

石や天然木といった自然の素材を使っています。外装の格子状のデザインやゲートなどには、東京都西部の多摩産木材の使用を検討しています。地産地消ということと、土地の在来種であることにこだわりました。屋上緑化や植栽など、緑も豊かに配しています。また、テラスや3階に設けたデッキにも、在来種ではありませんが天然木を使用しています。

今村

神宮の森からの風が、建物にせき止められず、原宿の街に吹き抜けていくようにするイメージを持って設計しています。

──2020年の開業に向けた、今後の計画を教えてください。

──2020年の開業に向けた、今後の計画を教えてください。

今村

建設計画はほぼ固まっているので、現在は入居するテナントの決定に注力しているところです。特に通路に並ぶ小規模な店舗は、設計上も建物の印象を大きく左右します。一つひとつのテナントの選定は非常に重要です。

杉木

商品、つまりモノを販売するだけでなく、情報発信や新しい試みを展開していきたいと考えています。原宿という街の中で、新たな施設が加える魅力や入居するテナントが発信していく魅力の相乗効果を生み出していきたいですね。そのためにも、入居されるテナントとのコミュニケーションも大事にしていきます。 また、建物の顔となる表通り側のテナントには、新しいことを発信する姿勢を期待しています。「この場所だからこそ」という店づくり、ほかの土地では行っていない取り組みに挑戦していただきたいと考えています。

──イベントホールやシェアスペースが設置される中層階についての構想をお聞かせください。

──イベントホールやシェアスペースが設置される中層階についての構想をお聞かせください。

杉木

用途は決まっていますが、具体的にはまだこれからです。情報発信の場であり続けるために、継続する仕組みをつくる必要があります。運営を担うパートナーやオペレーションを含めて、仕組みづくりをしていきます。プロジェクトチームには運営担当の社員も参加しており、開業準備室のような位置付けで動いています。

──その他、2020年の開業以後を含めて、どのような建物、場にしていきたいか、抱負をお聞かせください。

──その他、2020年の開業以後を含めて、どのような建物、場にしていきたいか、抱負をお聞かせください。

杉木

ネットショッピングの拡大により、店舗へ足を運び買い物をするということの価値は、だんだんと低下していくでしょう。実店舗は、単にモノを手に入れるという意味では、利便性や商品数においてインターネットには及びません。場所そのものの魅力や直接的なコミュニケーションによって、店舗を訪れることの価値を高めていく必要があります。 その点、原宿は街のつくりにも多様性があり、訪れる人も活気があって刺激的です。そういった「訪れることが楽しい、街歩きが楽しい」という原宿の魅力を維持しながら高めていくことが大切です。これから私たちが建設する施設は、その核となる場です。まずはきちんとつくりあげること。それから、竣工後の運営の仕組みをしっかりと考えていきたいと思っています。

今村

繰り返しになりますが、テナントの選定に力を入れていきたいと考えています。施設内や竹下通りへ抜ける道に入居するテナントが、街の印象をつくる上で重要な役割を果たします。新しいブランドや、これから注目されてくるブランドが入居するだろう、という社会的な期待もあると思います。そのなかには個人の小さなお店など、待っているだけでは情報が得られないところも多いでしょう。営業チームとも連携しながら、幅広く情報を収集し、各地へ積極的に足を運び、掘り出していきたいと考えています。

※インタビューは、2018年7月上旬に実施しました。

竹下通り側から見た外観の完成予想図
竹下通り側から見た外観(完成予想図)
竹下通り側から見た外観(完成予想図)