NTT都市開発株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 辻上 広志)は、公益財団法人日本デザイン振興会主催の「2021 年度グッドデザイン賞」を「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」「新風館」「ザ・ホテル青龍 京都清水」「IKE・SUNPARK(イケ・サンパーク)」「ウエリス市谷加賀町」の5物件で受賞しましたのでお知らせいたします。なお、昨年の「THE HIRAMATSU 京都」「OTEMACHI ART Lab.(大手町アートラボラトリーズ)」「Wellith One Aoyama」「横浜グリーンバトンプロジェクト」に続き、10年連続の受賞となります。
「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」 ベスト100選出
(左)全体鳥瞰 (右上)2階店舗に面するパサージュ・テラス (右下)街並みを見下ろす3階テラス
【概要】
店舗、レストラン、コワークスペース、多目的ホール、集合住宅が立体的に構成する施設は、広大な明治神宮の杜とハイブランドが並ぶ「表参道」、ストリートカルチャーの発信地である「竹下通り」の3つのエリアに囲まれています。2つのストリートの間という立地を生かし、建物を縦横に貫く「パサージュ」を中心とした街に開かれた施設とし、地域全体の回遊性を飛躍的に向上させ、多様で奥行きのある街へ進化させました。また、かつて源氏山と呼ばれた小高い丘陵地の再現と捉え、失われつつある斜面緑地を再生し、緑の地域連携をめざしたことで明治神宮やストリートを結ぶハブとなる、緑あふれる地域の新しい公共空間を実現しました。
【審査委員の評価】
原宿駅前に立地する商業と集合住宅を中心とした大規模複合施設。緩い勾配をもった周辺エリアでは坂道をそぞろ歩きするように、街を散策する体験に特徴があり、若者を中心に長い間人気を保っている。本計画もその斜面地形を生かしたボリューム構成とし、これを貫通する「パサージュ」は立体的にシークエンスが展開する「原宿らしい街のような商業空間」を生み出すことに成功している。さらに明治神宮の森を抜けてくる涼やかな自然風をパサージュを通して裏側の街区に誘導することで地域気温を約2℃下げる※ことや、外壁に天然木材を多く用い柔らかな都市景観を作り出すなど、敷地内に留まらない公共的な利益を生み出す施設であり、これからの大規模商業施設が進むべき方向を示す先駆的な作品として高く評価した。 ※シミュレーション値
「新風館」
(左)建物全景 (右上)中庭 (右下)街区をつなぐ小路
【概要】
日本近代建築のパイオニアである吉田鉄郎が設計した旧京都中央電話局(旧棟)の一部を残しつつ、約20年前建設された旧新風館は、今回、暫定開発であった増築部分を撤去したうえで、ホテル、商業、ミニシアターの複合施設として生まれ変わりました。旧新風館の「中庭」を残しつつ、平安京の時代から継承された条坊制の120m角の街区に対して新たな「小路」を導入し、ACE HOTEL特有の開かれたラウンジや地下鉄との接続通路など、複数のエントランスが「中庭」を介して繋がることで、訪れる人びとが行き交い、人の流れが周囲に広がる地域の結節点となる建築をめざしました。
大正時代に建てられた旧棟は、耐震性や断熱性能を確保しつつ歴史的価値を継承し長く使い続けるために格子窓を現代の技術で復元し、レンガ調タイルは一部貼替えを行いつつ、年月を経た風合いを残しました。長年、市民に親しまれてきた旧棟のアーチ格子窓やレンガ調タイルの景色とともに、新しく生まれ変わった「中庭」や「小路」が街の一部として定着し、「新風館」を行き交う人びとの賑わいが京都の新たな風景となることを願っています。
【審査委員の評価】
何度か新風館には訪ね、またホテルも利用させてもらっていますが、非常によくできた商業施設です。説明のテキストにもあるように回遊性があり京都らしさも表現され、空間性も居心地よく滞在できます。エースホテルとの相性は抜群に良く、入っているテナントも感度が高いこと、またサイン計画に至るまでデザインに隙がなく上質な空間を街に提供している点において、上手に新陳代謝していくことで長く愛される施設になっていくことが予見されます。
「ザ・ホテル青龍 京都清水」
(左)中庭夜景 (右上)当時講堂として利用されていたレストラン (右下)南棟外観
【概要】
1933 年竣工(京都番組小学校)、2011 年閉校となった市立小学校に対し、京都市により校舎の保存・再生を前提とした事業提案が求められ、本プロジェクトが選定されました。「記憶を刻み、未来へつなぐ」を基本方針とし、既存校舎の価値を活かしながらラグジュアリーホテルへのコンバージョンおよび増築を行いました。
外装は、洗出し、タイル、瓦、木製腕木、石材など既存校舎の保存・再生を行いながら、増築部分(客室・ラウンジ)はミニマルデザインに抑えることで、オリジナルデザインを尊重するものとしました。内装においてもラグジュアリーホテルとしての設え・グレードを確保しつつ、耐震補強を行いながら各所の空間イメージや部材は残し、装飾性あふれる既存校舎のデザインを活かしました。80 年以上地域に育まれ愛されてきた小学校が、今後はホテルとして、宿泊客のみならず地域の方々にも愛され続けることを願っています。
【審査委員の評価】
閉校となった歴史ある小学校の活用について、京都市の発案により事業提案が求められ、既存建物を保存・復原しながらホテルとして蘇らせることで歴史的建築物の保存と活用が実行されたプロジェクト。耐震、防火、景観など現行法規下の法的課題を、京都市条例を活用してオリジナルデザインの尊重や各所の建築部材自体の保存・復原を行うことで増築を伴う用途変更が可能となり事業の実現に至っている。民官の連携し、ラグジュアリーホテルとしての新しい機能とデザインの両立に、デザイナーや施工者が一丸となって取り組みハードルをクリアすることで、80年以上にわたり学び舎として地域に愛されてきた小学校の保存という市民の願いに応えた。同時に周辺の歴史的景観や眺望への積極的なアプローチによって新たな価値を創出しており、地域文化の継続の好例として評価した。
「IKE・SUNPARK(イケ・サンパーク)」
(左)ひらかれた公園エントランス (右上)多様な業態の小型店舗 (右下)公園内を運行するイケバス
【概要】
池袋の商業圏の外れに位置する本公園は、隣接する木密地域住民の豊かな日常生活への貢献と、フェイズフリーな防災機能の発揮をめざしました。将来控える周辺の大規模開発や、隣地への大学誘致を見据え、急速なニーズ変化に対応可能な可変的なプログラムと、開かれたエントランスや夜間の光環境の創出により新たな都市軸をデザインし地域と地域をつないでいます。
近年のP-PFI事業に散見される投資回収を前提とした施設計画や、過度な集客競争への課題意識から、カフェや多様な業態の小型店舗、定期開催のファーマーズマーケット等のイベント運営により、地域と共に街を育む仕組みを提供しました。日常的にも魅力的な使い勝手とデザインを提供し、移りゆく街と共に成長する「つなぎ、育む都市公園」を提案します。
【審査委員の評価】
防災と賑わいの2つの課題に対応する公園。近年のPark-PFIで懸念される過度な商業化に対して、公園としての良いバランスを保ち、日常に寛ぎと安心を与える空間となっている。さらに、コミュニティバスの運行ルートへの編入、今後整備される大学キャンパスとの連続性など、周辺・広域地域との連動によって、公園単体の整備に留まらずまちづくりに寄与するものとなっている。都市生活でのさらなる公園の使いこなし文化が育つ土壌となることを期待したい。
「ウエリス市谷加賀町」
(左)建物全景 (右上)エントランス (右下)モデルルーム
【概要】
都心の閑静な住宅街における住まいへの普遍的価値を具現化したプロジェクトです。全住戸を角住戸・コーナーリビングとし、見合いの解消とともに豊かな自然採光や、自然換気経路、ルーフバルコニーなどの外部空間を計画。持続可能かつ普遍的な価値を住まいに提供しました。また、内部プランに応じて中高木を配置することで、プライバシーと隣地から見た建物圧迫感低減など双方の価値を創出。周辺の植生に合わせたアラカシやイヌマキなどのやわらかな常緑樹にて計画し景観に配慮するとともに、敷地南側には隣地境に8mものコブシを保存することで、地域の魅力を継承しつつ、唯一南側道路から確認することができる建物の圧迫感低減に寄与しています。
【審査委員の評価】
端正な佇まいの中に、工夫を凝らしたプランの集合住宅である。中コア・ドーナツ型の住戸配置によって、全ての住戸がコーナーリビングとなっていることは、敷地の中央に置かれた配置計画や、L型の平面計画とも相性が良い。また各住戸が皆少しずつプランが変わる計画も素晴らしい。一点指摘をする点があるとすれば、コーナーリビングの魅力を活かすためには、もうすこし開口部が大きい方がよかったのではないかと思われる。
<参考:グッドデザイン賞とは>
「グッドデザイン賞」は、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する、総合的なデザインの推奨制度です。その母体となったのは、1957年に通商産業省(現経済産業省)によって創設された「グッドデザイン商品選定制度(通称Gマーク制度)」であり、以来50年以上にわたって、私たちの暮らしと産業、そして社会全体を豊かにする「よいデザイン」を顕彰し続けてきました。
また、「Gマーク」は、創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として、その役割を果たし続けています。
お問い合わせ先 広報室 鈴島・小張 Tel.03-6811-6241