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NTTUD DESIGN 対談シリーズ #02 前編 歴史と文化 ロバート キャンベル  ×  竹村真一 1 イメージ画像

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「新たな価値を生み出すまちづくり」のために、いまできることは、なんだろう。
私たちNTT都市開発は、この問いに真摯に向き合うべく、
新たな取り組みをスタートさせました。

それは、「デザイン」を軸に社会の変化を先読みし、未来を切り拓く試みです。
私たちが考える「デザインビジョン」から導き出された3つのキーワード
「コミュニティ」「歴史と文化」「ライフ&ワーク」について、
各界で活躍するトップランナーたちの対談を実施。
その模様をここに公開します。

第2弾の「歴史と文化」対談には、国文学研究資料館長で日本文学者のロバート キャンベルさんと、地球規模の新たな文明のあり方を提唱する文化人類学者の竹村真一さんが登場。歴史に学び未来を導く視点から、多様な文化を継承するためのヒントまで。多様な人々が記憶を受け継ぎ共存していく、新たなまちづくりの方法を考えます。

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ロバート キャンベル
(Robert Campbell)

NTTUD DESIGN 対談シリーズ #02 前編 歴史と文化 ロバート キャンベル  ×  竹村真一 1 イメージ画像
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竹村 真一
(たけむら・しんいち)

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第2弾の「歴史と文化」対談には、国文学研究資料館長で日本文学者のロバート キャンベルさんと、地球規模の新たな文明のあり方を提唱する文化人類学者の竹村真一さんが登場。歴史に学び未来を導く視点から、多様な文化を継承するためのヒントまで。多様な人々が記憶を受け継ぎ共存していく、新たなまちづくりの方法を考えます。

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ロバート キャンベル(Robert Campbell)

日本文学研究者、国文学研究資料館長。アメリカ・ニューヨーク生まれ。ハーバード大学大学院東アジア言語文化学科博士課程修了。近世・近代日本文学を専門に、漢文学と関連の深い芸術、メディア、思想などに関心を寄せる。2007年から東京大学大学院総合文化研究科教授を務め17年に退職、同年4月より国文学研究資料館長。MCやコメンテーターとしてのテレビ出演や新聞雑誌連載、書評、ラジオ番組企画・出演など、様々なメディアで活躍中。公式サイトhttp://robertcampbell.jp/

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竹村 真一(たけむら・しんいち)

Earth Literacy Program代表、京都造形芸術大学教授。1959年、大阪府生まれ。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。20代で世界約70カ国を踏破し、地球時代の新たな「人間学」を提起しつつ、世界初のデジタル地球儀『触れる地球』や「100万人のキャンドルナイト」など、独自の視点から地球環境問題に取り組む。東日本大震災「復興構想会議」検討部会専門委員や、UNISDR(国連国際防災戦略事務局)のコミュニケーション・アドバイザーなどを務めるほか、著書も多数。Earth Literacy Program 公式サイト  http://www.elp.or.jp/

歴史と文化を読み解く、それぞれのまなざし

歴史と文化を読み解く、それぞれのまなざし

──それぞれのご活動内容と、「歴史・文化」に関する取り組みについて教えてください。

──それぞれのご活動内容と、「歴史・文化」に関する取り組みについて教えてください。

竹村

私は一言で言うと"地球"をテーマに、21世紀の地球人を育てるには21世紀の地球メディアが必要だというコンセプトで仕事をしています。例えば『触れる地球』(※1)という作品では、球形のスクリーン上にいま発生している台風の姿や、地球上でどこが朝を迎えているのかという"朝のリレー"などをリアルタイム表示し、生きた地球の姿を可視化しています。その一方では、この地球そのものを"生きた地球博物館"に変えていきたいとも考えています。例えば『ユビキタスミュージアム』(※2)などの作品は、いま自分がいる場所の人間や地球の歴史が携帯に表示されることで、AR(拡張現実)的に地球の情報に触れるための取り組みです。このように地球の姿や歴史を表現する作品づくりを通して、2002年頃から社会実験を続けています。
(※1)竹村真一『触れる地球』  http://www.elp.or.jp/portfolio/触れる地球/ (※2)竹村真一『ユビキタスミュージアム』  http://www.elp.or.jp/portfolio/ユビキタスミュージアム/(※1)竹村真一『触れる地球』
http://www.elp.or.jp/portfolio/触れる地球/

(※2)竹村真一『ユビキタスミュージアム』
http://www.elp.or.jp/portfolio/ユビキタスミュージアム/

キャンベル

私は東京大学大学院の教授を経て、2017年4月から国文学研究資料館(※3/国文研)の館長に就任しました。国文研では日本の津々浦々に現存している、古典籍(こてんせき)という明治以前の書物を1点ずつ読み解き、撮影した画像と書誌データを整備して公開しています。このような取り組みを行っている機関は世界的に見ても例がなく、非常に意義深いものです。また、近年では「新日本古典籍総合データベース」という30万タイトルを自在に検索できる画像データベースを作り、公開しています。(※4)こうした貴重な文化資源をどのように現代の人々と共有し、活用していけるのかというミッションに日々、取り組んでいます。
(※3)国文学研究資料館 公式サイト  http://www.nijl.ac.jp/ (※4)新日本古典籍総合データベース  https://kotenseki.nijl.ac.jp/ (※3)国文学研究資料館 公式サイト
http://www.nijl.ac.jp/

(※4)新日本古典籍総合データベース
https://kotenseki.nijl.ac.jp/

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アマゾン川上流(ペルーアマゾン)のシピボ族による、伝統的な日用工芸品の壺。滞在中に村長から譲り受けたもの(竹村氏私物)
アマゾン川上流(ペルーアマゾン)のシピボ族による、伝統的な日用工芸品の壺。滞在中に村長から譲り受けたもの(竹村氏私物)

"世界の解像度"を高める文化の力

"世界の解像度"を高める文化の力

──おふたりには本日、それぞれに「歴史と文化」を象徴するものをお持ちいただきました。竹村さんから、ご説明をお願いできますでしょうか。

──おふたりには本日、それぞれに「歴史と文化」を象徴するものをお持ちいただきました。竹村さんから、ご説明をお願いできますでしょうか。

竹村

はい。私が今日持ってきた壺ですが、いまのキャンベルさんのお話と共通項があると思います。これはアマゾンの熱帯雨林に住む先住民のシピボ族のもの。この模様は、シャーマンが幻覚植物を摂取してトランス状態になった状態で見た映像を描いたもので、布やボディペインティングにも同様の模様が描かれます。シピボ族のシャーマンは優れた薬草医でもありますが、一緒に森を歩く中で、ただ鬱蒼と茂った熱帯雨林でしかなかった景色の解像度が上がり、どの植物が有用で何が危険かということが情報となって見えてくるという経験をしました。逆に言えば、都市生活を営む現代の私たちのほうが非常に低い解像度で世界を見ているということに気付かされたのです。
この体験から、リアルな世界とは切り離されたバーチャルなメディアを作るのではなく、この現実世界を見る私たちの解像度を高めていくようなメディア開発と、リアルな空間に埋め込まれた隠れたコンテクストを読み解くために、私たち自身のリテラシーを育てていくという活動スタンスが生まれました。
一方で、メディアのあり方を歴史的に辿れば、古今東西の文献が集められたアレクサンドリア図書館がエジプトでつくられたのが紀元前300年。これは一箇所の場という意味でシアター型のメディアです。それが15世紀のグーテンベルクの活版印刷革命によって、情報がマスプロ化(大量生産)され、パッケージ型メディアが主流化していく。さらに現代ではITによるネットワークやスマートフォンのようなメディアが登場し、地球上のどこでも情報をひも解くことができるようになった。であれば、文学などの言語資源に蓄積されてきたものを地球上の空間に再び解放し、それぞれの現場でブラウンジング(検索表示)できるようにすることで、その土地の記憶や隠れたテキストを誰もが読み書きできるようになるはずだと考えています。

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キャンベル

いまのお話から、この会場(Takram Tokyo Meeting Hub)からほど近い明治神宮の森のことを思い出しました。あの森はおよそ100年前に「潜在的植生」という、公共事業としては世界的にも画期的な発想で植林されたものです。これは50年放っておくと自然に生えてくる植生を予見して木を植えるというもので、人工の森でありながらも豊かな自然を培っている。ニューヨークのセントラルパークがイギリスの自然をルーツとしつつ、「こうあるべき」という理想的な風景をつくり出そうとしたのとは対照的な方法です。私は東日本大震災で破壊された東北の防災林を再現する活動に取り組んでいますが、その専門家の方と明治神宮を歩いた時は、じつに多種多様な植物が生えていることに驚かされました。

現代の常識を問い直す歴史の効能

現代の常識を問い直す歴史の効能

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江戸時代末期、尾道で開催されていた文化人たちの交流の様子を書き留めた書物(ロバート キャンベル氏私物)
江戸時代末期、尾道で開催されていた文化人たちの交流の様子を書き留めた書物(ロバート キャンベル氏私物)

キャンベル

ここで私も、持参したものをお見せしましょう。これは江戸時代の小さな書物ですが、アコーディオン状に開くことで、同じ人物が様々な場面で船に乗ったり行楽をしたりしている様子が現れます。幕末の尾道の富豪が全国から文化人を集めて交流会や揮毫(きごう)会、現代でいう書画のワークショップを開催した様子を地元の若い画家が書き留めた、記録とも作品ともいえるものです。大きさから推測するに、煎茶の席でお茶をいただく合間に楽しむものだったのではないかと思います。
この小さな本を眺めていると、当時の人々の息づかいや豊かな眺めがありありと甦ってきます。と同時にその体験は、「日本の文学とは何か?」という問いにもつながります。こうした書物には、現代人である私たちが慣れ親しんだ「文学」や「絵画」など、西洋の近代的な分類法では定義できないような広がりや奥行きがあるからです。このように日本文化には、現代の私たちの生活や意識を支配している様々な線引きや分類を問い直し、新たなものを作り出す力があると考えています。

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